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スーパーでレモンを買ってまで作る事はないが、久々に挑戦してみてもいいかもと考えていると滋さんに睨まれた。
「だから、希望は何って聞くの三回目なんだけど」
「あっ、すいません、レモンケーキがいいみたいです」
先生方のリクエストを聞き妄想中だったので、質問は耳に入ってなかったが、財布の紐なので雑な対応は出来ない。
「分かった、食べる量もあると思うから適当に業務用サイズ準備しておけばいい?」
「かたじけない、ドラマの喫茶シーンでありそうなヤツでお願いします」
首を傾げ冷ややかな視線を感じたが、先生方の希望を偽りなく伝えたので、再度手を合わせておいた。
九黎が女の腕を取り、男はその場で立っていたので滋さんが手招きをしていた。
「空間が出せるならウチでも渡せるし、希望の品は早く用意出来ると思う」
ウチにも頑丈な部屋は沢山あるし、訓練でも修行でもなく『お供え物』だけなので、職場で出来るなら手間も掛からない。
滋さんの返事を聞いたと同時に又先生方がザワついていたので、喜んで貰えたと思っていると提案を持ち出された。
「せっかく先輩と同業者がいるんだし、アンタもアピールしておいた方がいいんじゃないかい?」
「査定はボーナスに響くんだろ?ドラマでもやってた」
「基本ウチはボーナスないんで大丈夫ですが、見せるとすれば目の前の若人ではなく、外で待たせているキツネですかね」
外で正座しているのが社長だと改めて紹介すると、どっかで見た事があるという先生方も居た。
そして正座をした姿の瑠里と社長が空間に入って来ると、私達以上にキツネ共が驚いていた。
「なっ、ここは何処じゃ、背景が怖す……」
「言い方気を付けろよ?先生方のご厚意で招かれたんだし、無礼があれば速攻シバくからな」
「ま、まぁでも般若の空間……いや、部屋だと思えば違和感なくなるかも」
こんな怖い部屋に誰も招かないし、ゲームをしたりおやつを食べたりするには不向きだ。
どの位置に居ても屏風の虎や竜が襲ってきそうだし、まず落ち着かないので模様替えをしたい。
「しゃ、社長……執行するならこちらでも対応できるので、手間を省こうかと仰ってます」
レモンケーキでご機嫌なのは分かるが、このような提案を社長が断る訳がないので足止めされた気分だ。
「それは名案じゃ、百合さんとのコラボがどのような形で再現されるのか、社長として確認してお……」
とんでもない気配を感じ、その場にいた全員が屏風に目をやると、中から走り出した虎は男性の前に立ち前足を振り下ろした。
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