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初めて出た空間の中で化け物と遭遇し、瑠里と交換して欲しいが、絶対に断られる。
少し癒し役がいてもいいと思うが、こちらの先生方はほぼ全員怖いのが特徴だ。
唯一テンションが上がるのがお供え物だと最近知ったが、屏風の中の者とコミュニ―ケーションが取れるのか等不安が襲ってくる。
「そ、そんな心配そうな顔しなくても、百合の先生方の一部なんでしょ」
「初顔合わせでよく分かりません、てか勢い余ってこっちがああなるって事はないんでしょうか」
「その眼は与えられたんでしょ?普通に茶色で可愛らしいよ」
前向きなコメントを言われる程、励まそうという意図が読み取れるが、九黎はオーラのような光に囲まれ誰かと会話している。
まるで先程の事はなかったかのように時間が経っても、少し離れた場所に黄金に輝く屏風が事実だと物語っている。
話を終え銀山犬のトップ右腕が戻ると、先生方にお礼を言い外に出ると空間も消えた。
皆苦笑いで解散し社長が扉を出して職場に帰ると、シャワーと着替えを済ませ受付で挨拶し部屋に入った。
チョコやフィナンシェ等、甘い物が中心に置かれご自由にどうぞとメモ書きまでしてあり、コーヒーを紙コップに注ぐと有難く頂いた。
「何か疲労感が半端ないよ、肉体的というより精神的に」
「無理もあるまい、ちょっとした殺人現場の目撃者の気分だし、あんな怖い屏風初めて見たよ」
時代劇の城のシーンでは、屏風はもっと縁起のいい絵が描かれているし、恐怖を感じた事は一度もない。
高そうと思う事はあっても、命の危険を察知し気疲れもないし、拭いきれない不安まで込み上げてくる。
「空間出せる人ってさぁ、自分のテリトリーな感じだったよね?アウェイ感が半端なかったんだけど」
「まぁ、一歩間違えたら餌にされそうな雰囲気はあった。幾ら般若に合わせたと言っても、あそこまでのレベルにしなくても……」
美味しいスイーツを口にしているというのに、会話の声が段々と小さくなる位、どう慣れたらいいのか答えが出てこない。
「どうしたの?スイーツを目の前に手が止まるなんて姉妹らしくもない」
木村さんは盆に沢山のせんべいを乗せていたが、顔くらいの大きさがあるので食べ応えがありそうだ。
暗い表情を察してくれたまでは良かったが、社長を手招きで呼んでいたので帰り支度を始めていた。
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