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「えっ何で?まだ食べてたじゃん、あからさまに帰るオーラ出さなくてもいいでしょうに」
「今日は疲れてるんで帰ろうって思ったんです……数分前に」
「それワシのせいって聞こえるじゃん、照れんでもええんよぉ」
全く笑えないのに一人でプフッと吹き出しているキツネ……いや社長に冷ややかな目を向けた。
「ちょっとシリアスな般若みたいな顔せんでも、コーヒー飲んで落ち着いたらどうじゃ」
瑠里が黙って座るので、イラつきながら隣に腰を降ろすとキツネを睨む。
まず意識が飛んでからの報告だが、社長が様子を見ていると、私の周りに変なオーラが出ていたので経過観察したようだ。
暫くすると犬が数匹集まって遠吠えが始まり、般若が起き上がられたと物語調に言い、格好をつけコーヒーを口にしている。
遠吠えに瑠里が来ると合流し、後は百合さんも知っての通りじゃと締め括られたが、単純にイラ度が増しただけだった。
「てかお前ら何もしてねーじゃん、犬の方が助け呼んでくれとるやろが!」
「だって大丈夫か聞こうとしたけど……般若から光が見えたし、近づいたら吸収されるって話になって」
「頭痛薬飲んどる時点で調子悪いの分かるやろが!プチ会議してる間に身体くらい支えに来いや」
盆からせんべいを取りバリボリとかじっていると、背筋をピンと伸ばして聞いていたキツネ達もつられるように手に取っていた。
飲み物を買った時は幻覚と話をしているように見え、恐怖を感じたと聞こえるように話をしている。
「瞬時にスイーツが消え、そんな芸当が出来るなんて、やはり般若という名に間違いはなかったと確信……」
「様子見の時間長すぎやろが!面白がって尾行してただけにしか聞こえんし、帰らせてもらいます」
木村さんも引きつった顔で聞いていたが、こちらを見る目は『ご愁傷様』と同情してくれているのが伝わる。
バリボリとせんべいを食べる音が部屋にこだましていたが、立ち上がろうとすると止められ、説明の続きが始まった。
捕らわれた男女は一回目に消された男の仲間だが、背後に何らかの組織が関与してる事が分かったらしい。
九黎も自分の世界に危険が及ぶかもしれない以上、協力は惜しまないと情報網を駆使し大まかな見当がつき始めてるという。
「敵の種類によってはウチも同時に出動した方が良いが、妖怪エリアの者ばかりなら向こうに任せた方がいい」
確かに表の暗殺集団……いや、正義の味方は優秀だし、ヒクイドリとタッグを組んで攻撃も見ている。
特殊班と合同で行くよりも銀山犬の部隊に委ねた方がスムーズに進むかもしれない。
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