洒落たレモンケーキ

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「そんな訳で任務終了の目途がついてきたが、百合がもう空間を出せるようになったのには(いささ)か驚きが隠せん」 「同感です、出せる方が妖怪エリアでは強みになるかもですが、今の仕事にはまだ不要なんで」 「こちらの職場も一部の者は出せるが、にしても、あんなレイアウトは初めてで……部屋全体が武器じゃん」 隣でせんべいを食べている瑠里も大きく頷いていたが、ぶっちゃけあの部屋は本人ですら怖い。 デカくて恐ろしい屏風があり、本当に描かれた魔物が出てくるなんて、将来的にあの部屋で敵と戦うのも恐ろしい。 手間取るとイラつかれ、敵と共に葬られるのではとか、目つきが気に入らないとイチャモンをつけ襲われる確率もゼロではない。 「そうだ!社長なんとかして下さいよ、屏風の魔物が怖すぎて自分の空間って感じしないですし」 「いや……持ち出そうとしたら命取られるじゃん?それに指示出してんの先生方なんでしょ」 藁にでもすがる気持ちで半分以上本気だったが呆気なく却下され、チョコを二個口に入れ贅沢な食べ方で気分を紛らわそうとした。 無言で話を聞き、せんべいを一早く完食した盗賊のお頭……いや、木村さんはフィナンシェを手に取り頬張っている。 「虎と竜ね、まさかとは思うけど、他にも居たりして……先生方って良くも悪くも超絶強いのは分かるから」 「えっ、マジですか?!そうならもう出したくないんですけど」 「虎も大蛇も百合がチカラを貰ってる世界だし、先生方も絡んでるとすれば、ありえん話でもない」 涙目になりそうだったが、瑠里にベテラン刑事風で肩を叩かれ『山が出来たら又越える……それの繰り返しが血となり肉となる』とアドバイスされた。 先生方は超一流の魔族だが、供え物をするとこちらの事まで考えてくれるんだし、ギブアントテイクで話の分かる化け物だと追加された。 「結局化け物ついとるやろが、でもそれを除くと基本ウチの一家の考え方に近い気もする」 「でしょ?やっぱ同じ匂いがするから般若ファミリーに入ったんだよ」 私なんかとはレベルが違いすぎるが、何であんな凄い方々と巡り合ったのかは不思議だった。 色々頭に浮かび始めると、木村さんの合図で解散となり、残りの高級せんべいは手土産にしてくれた。 今後の事を考えると胃が痛くなりそうだが、明日からは一応休みになったので、気持ちを切り替えるように力強く歩いた。
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