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「キセロ、今般若はナーバスだから余計な事するとシバかれるよ、嵐が去るのを待とう」
言い方はムカつくが哀愁を漂わせながら瑠里の膝に移動し、おやつが貰えなかったと落ち込むように演技……してるように見える。
渋々数本あげていると、瑠里が隅にある段ボールに気づきドラム缶に質問していた。
「それお婆ちゃん宅になってたレモンだけど、放置してるから酸っぱくてね、百合にジャムかケーキにして貰おうと思って」
「いや自分がやればいいじゃん、家にいるんだし」
「幾らタダとはいえ失敗したら勿体ないでしょ?そのままの状態にしておいても腐って地面に落ちるだけだし」
当たり前のように言い返されたが、自分は娘なんだしお婆ちゃんのレシピを少しは受け継いでおけよと呆れてため息が出る。
気が向いたらねと部屋に戻り仮眠に入ったが、昼前位に起こされると母はモールに行く気満々で着替えも終わっていた。
「別に晩御飯に持ち帰りでもいいじゃん、まだ疲れが取れてないんだよ」
「若人は仕事終わりでも、クラブでガンガン踊れます位の体力つけてナンボでしょうが」
口では勝てないのでのっそり身体を起こしリビングに向かうと、暫くして瑠里も王子達と入って来た。
「バーガーお高めだけど結構ボリューミーだったよね、照り焼きがあったのはチェック済みだし、給料後に連れてって貰おうと狙ってたんだよね」
やはり金額を確認しているのはウチの家族らしいが、言うタイミングまで考えてるとは思わなかった。
瑠里を見ると苦笑いをしていたが、のんびりしているとクレームが出るので、急いで支度をし着替えを済ませた。
モールで日用品を買った後は王子達のおやつや、ニューフェイス達の使っているアイテムをチェックする為、ペットショップに向かうのもいつものコースだ。
今日はお客が少なめだったので、アピールし甲斐がないのか、ニューフェイス達は横になってダラダラとしていた。
王子達は少し離れた場所に移動させておかないと、中にいる子が怯えるのでカートに乗せ椅子のある位置でお守り役として残った。
余計な物は買わないように瑠里についてもらい、王子達は身を乗り出しているのでそっと手を置く。
「周りから見たら可愛い小型犬なんだよ、それらしく振舞って貰わないとね、それに王子達と遊べるレベルの子いないから」
臨機応変に対応出来るベテラン俳優達は、周りを意識してカートの柵に前足を乗せつぶらな目で飼い主を待つ子に変身している。
期待通りにドラム缶は袋を提げ、手を振りながらこちらに向かう姿を見つけると、嬉しいそうに尻尾を振り抜かりはない。
「帰ったらおやつあげるからね~」
可愛い姿にデレデレの母だが、それを後ろから見学していた私はベテラン俳優の演技力に感心していた。
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