小麦イザリ屋帳14

洒落たレモンケーキ

「さてマミーも横になろっと、血糖値若干上がるかもだけどドントウォ……」

「気にしろや！先生に又怒られるよ？」

冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出してる間に母も目を閉じていて、深い溜息をついてからレモンの処理を黙々としていた。

玄米粉と米粉は母に頼んで作って貰っておいたので、レモンケーキにすれば結構消費出来るし、成功したら差し入れに木村さんへ持って行くのも悪くない。

人様に渡すなら豪華版のホワイトチョコ入りにした方がいいので、念の為にモールで買っておいた。

冷凍すれば日持ちするし、土産分は直前まで冷蔵庫に入れておけばしっとり感も増す。

沢山作って冷凍しとけばおやつに回せるし、と節約内容を考えつつ、レモンのパウンドケーキを作り始めた。

オーブンも最新なので優秀だし、途中で開けて真ん中に切り込みを入れる作業も上手くいっている。

お婆ちゃんは自分で火を入れるタイプだったので、コツが必要だがこれなら簡単にパウンドケーキも焼く事が出来る。

レモンの皮を刻んだり粉を混ぜたりレモン汁を絞ったり、分量をキッチリ計りさえすれば仕上げはオーブン職人に任せておけばいいのだ。

焼いてる間に次の生地の準備をしたり、風呂掃除を済ませていると、洒落た音色で呼び止められ職人の元に向った。

「いい仕事してますねぇ……焼き色も完璧でさぁ、ダンナ」

ケーキクーラーで冷まし次の生地を型に入れ、オーブン職人に頼んだが、全部ここに住む時に用意されてたので電化製品で購入した物はない。

料理道具や便利グッズ等も揃っていて、ケーキクーラーなんて使った事なかったが、せっかくあるので利用しない手はない。

混ぜるのもハンドミキサーだし、これならお菓子作りも苦にならないのに、我が家のドラム缶は老眼と理由をつけ避けている。

レモンはたっぷりあるので生地に絞り汁も多めに使ったし、ホワイトチョコも分離しないように繊細に扱っているので、きっと爽やかな酸味のケーキになると思われる。

お婆ちゃんのご馳走ケーキを作るようになるとは思わなかったが、小さい頃から手伝っているので、何となく覚えているのも嬉しかった。

お婆ちゃんのレシピは薄っすら覚えているが書面にしてないので、少しずつパソコンで入力しプリントアウト出来るようにもしている。

以前木村さんにヘルシーなスイーツレシピを教える時にメモ書きだったので、万が一また聞かれたら、プリントアウトした物を渡そうと思ったからだ。

何気に豆腐のガトーショコラも藤井屋でアイデアを採用され商品となっているし、忘れたら教えてくれる人が居ないので、一つでも多く残したい気持ちもある。

休憩にアイスコーヒーを飲んでいると、イナリが鼻をクンクンとさせながら足元に近づいて来た。