洒落たレモンケーキ

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粗熱は取れているので冷蔵庫で冷ます際は水分が飛ばないようにラップで包むのだが、一切れは試食用にカットしてみてもいい。 ケーキクーラーに乗せたパウンドケーキの一つを少しカットし、残りはラップに包んで冷蔵庫に入れた。 「ん?何故お前まで居る?」 イナリの横で眠そうな顔でお座りしているキセロに溜息が出るが、切れ端を皿に移し王子達にあげた。 残りを口にしてみたが想像より成功していて、顔がニンマリとし、木村さんにも食べてもらえそうとホッとした。 「酸味がキツいと思ったけど、皮と絞り汁だしホワイトチョコがいい仕事してるよ、結構作ったし多めに持って行こう」 王子達は皿を舐め前に進んでいるので、お気に召したらしくその反応も嬉しかった。 木村さんなら一本イケそうなので、娘さんと分けるとして……五本くらい持って行けば恐らく足りる筈だ。 冷蔵庫にも沢山あるし家族には手作りは不評だが、今回はそれなりに喜んで貰えるだろうし、気に入らなかったとしても責任を持って食べさせるつもりだ。 一仕事を終え部屋で仮眠をしていると、メール音で目が覚め何となくメッセージを見た。 早速レモンケーキを手配出来たという完了メールで、渡すなら木村さんに伝えると分かるようにしてあるらしい。 「死神……仕事が早いな」 休み明けでもいいだろうが、木村さんにレモンケーキも渡したいので、明日にでも行こうと思い二度寝した。 晩御飯で起きた際に二人が冷蔵庫を見て驚いていたが、部屋に戻ってから瑠里に差し入れの件を伝えると珍しく御意と返事があった。 翌朝午前中に起きて支度をしていると、ドラム缶がレモンケーキを頬張りながらコーヒーを飲んでいた。 「結構作ったね、ジャムもあるしママそんなには食べれない」 「いや……誰も一気に食えなんて言ってないけど」 「木村さんにはいつもお世話になってるから、差し入れ持ってくなら本数増やせば?」 数え方がデブの感覚になってると注意をしたが、小さめとはいえ五本もあったら十分な筈だ。 でもドラム缶と似たような体型の人だし、本人は二本くらい食べそうな勢いなので、もしかすると足りないのかもしれない。
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