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瑠里が後に下がったので、怖い顔をしていたのかもしれないが、ここまでやって誰かと出会えば無駄に馬鹿な真似をしたで終わってしまう。
落ち着く為にコーヒーを口にしていると、ためらいがちにノック音が三回なり、ビクッと肩が震えた。
縦のガラス部分から見えるシルエット的に背が高いので、木村さんではないし死神……と一瞬思ったが、ノックをして入るだろうかと疑問が湧く。
瑠里が向かいの席に戻り、二人無言でドアを見つめていると、静かに開いたので机の下にしゃがんだ。
電気がつけられたので奥側に移動していると、入り口付近で止まったまま声を掛けられた。
「何……してんの?」
疑問形の最上級という位、不思議感が声にこもっていたが、こうなると立ち上がって誤魔化すしかない。
唯護さんと目が合い野暮用だと濁したが、明らかに質問の答えになってないと目が訴えていた。
「まぁ内容は企業秘密っていう事で、唯護さんこそどうしたの?」
前回の件で先生方に何かお渡ししようと考え、お供えの品を持参した所、隣の部屋で待たされていたらしい。
「これは奇遇な事じゃ、してその品は何かな?」
「えっ、あぁ、桃のケーキを数ホール持って来たんだ」
ネーミングからしてウチにも一つ恵んで欲しいが、同じ空間で地獄絵巻を見た彼も、差し入れでもしないと落ち着けないのかもしれない。
でも彼らはあのエリアのプロだし、実はあの屏風を消す方法も知っているかもしれないが、それを堂々と質問するのも怖い。
何かの手違いで先生方にバレたら八つ裂きにされそうだし、余計な事をして墓穴を掘りたくないからだ。
「百合達はお休みなんでしょ?サプライズで持って来たつもりだけど、こっちが驚いたよ」
電気の消えた部屋から笑い声が聞こえ、入ると机の下に私達が居たので、そりゃあビックリしたに違いない。
でも私だったら隣から高笑いが聞こえたとしても、他の職場だし待たされてる状態で部屋から出てまで確認はしない。
立花の親族だからか、妖怪・お化けエリア担当として確かめたかったのかは不明が、やはり少々変わった人だと思えた。
「瑠里の声がしたけど電気はついてないから、恐らく誰かから隠れたいんだろうと思って。俺の存在と要件が分かれば安心するかなと」
「はぁ……有難うございます」
さすがは妖怪……いや、特殊班だけあって、プライベートでも考えが読めるのではと苦笑いが出た。
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