洒落たレモンケーキ

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「さっきのレモンケーキ、私達もちょっと試食しよ?」 「――いただきます!」 本物のケーキを出されたので更に差し入れを渡すタイミングを逃したが、それを知ってか木村さんから振ってくれる。 「百合、差し入れ持って来てくれたの?しかも手作りなんでしょ」 「お婆ちゃん宅でレモンが取れたんで、パウンドケーキにしてみたんですけど、出すの恥ずかしくなって」 「有難う百合、美味しくいただきます」 盗賊のお頭……いや、木村さんは満面の笑みで手を差し出してくれたが、唯護さんも欲しいと言い予定が狂う。 「ラップで包んであるだけだし、ギフト包装してないからさ」 「でも百合の手作りなら持って帰る!」 お頭も頷いているので、一本机の上に出すと早くバッグにしまってくれと忠告しケーキを頬張った。 プロの商品を前にど素人のおやつを比べられても困るし、この人達は癖があっても裕福なので自作の品を渡すのも抵抗がある。 「大丈夫じゃろう、ウチの職場の男性とは違い、貧乏人のおやつでも作り笑顔で美味しいと言うに違いない。きっと返しも貰えるであろうて、ハーッーハッハッ」 「だから殿笑い止め……ってか、このケーキすんごくおいひぃ!」 お金を出して買うプロのスイーツは材料は勿論だが、カットした後の美しさまで計算されクリームもデコレーションされている気がする。 ほんのりとしたレモンの酸味とクリームチーズの相性も抜群だし、これなら先生方も大いにお気に召すに違いない。 「だから……頬張りながらしゃべるの止めろって言ってますよね」 開いたドアから死神二人……いや、滋さんと歩兎さんの顔が見えると、思わず目線を下げたが瑠里は取られまいと食べる速度を上げた。 「いや、食べたかったら買うから先輩にそんな敵視止めてくれる?それに百合ちゃんの差し入れを何で男に渡したの?」 語尾にイラつきがこもっていたが、何故知っているのかと質問した。 「会議が終わって隣の部屋でコーヒー飲んでたら、何処かの殿が高笑いしながら言ってた」 歩兎さんが代わりに答えてくれ、瑠里を睨みつけたのは言うまでもないが、殿は苦笑いで木村さんを見ている。 「差し入れは私の為に作って来てくれたのよ?そんな目で女性を見るの止めなさい、殺されるかと勘違いするでしょ」 貫禄のある目つきで死神に説教するお頭は格好いいと思えるし、瑠里には追加のクッキーの箱を渡す辺り抜かりがない。 死神を見るお頭の目の方が違う意味で殺気を感じるし、ハツとキムには滋さんも敵わないのが分かる気がした。
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