恒例じゃない行事

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何事もなく平和に休みが過ぎる筈が、思わぬ事に邪魔され目が覚めたのは朝方の三時だった。 「違う意味で悪夢なんだけど……」 祖父母宅周辺で熊や大きな野犬等の獣に襲われる夢は何度も見ているが、今回は知り合いが出てきて後味が悪い。 叫びながら起きる事はなかったが、心臓が締め付けられるような嫌な感じで、二度寝をしようにも頭から離れない。 仕方がないのでリビングに出ると、既にこの時間帯に起きているドラム缶は、ぜんざいの鍋に餅を入れながら不思議そうにこちらを見た。 「どしたん、こんな朝早く珍しい……又熊の夢でも見たん?」 家族には悪夢で叫びながら起きるのを何度も見られているので、定番化されているというか、特に驚かれる事はなかった。 「悪夢だけど……違う方向というか、知り合いが亡くなる感じ」 「えっ?まさかビューティなママじゃないよね。大丈夫よ、ママリンは今からぜんざいの餅四個を美味しく頂いてから王子達と散歩に行くから」 「食べ過ぎでしょ!餅も高いんだし、ちょっとは節約してもらわないと」 注意する事で意識が逸れ気が紛れたとしても、違う意味で心配が増えそうだ。 「いつだったかテレビの夢判断で、死ぬのを見た相手は長生きするとか言ってたし」 基本母の記憶は曖昧なので当てにならないが、納得しかけて疑問が残る。 『この世界の者じゃなかったら』という事が。 そんな始まり方だとしても、結果日中に仮眠したり、起きたら時代劇を観てお菓子を摘むダラけた時間を過ごした。 でも次の日の朝方も同じような夢を見て、しかも最後に私の名を呼ばれ目が覚めたので、二度寝どころではなくなった。 『やっぱ…何か嫌な予感がする』 パーカーを羽織りリビングに入ると、鍋に焼いた餅を入れるドラム缶の姿が見えた。 「えっ、また?百合はまだヤングでしょ。何でこんな朝早く起きてんの」 「あのさ、デジャブ見てる気分だけど……昨日と同じ光景じゃん。餅食べ過ぎでしょうが」 誤魔化しようがないので、せんざいの餅を頬張りつつ、散歩にはカロリー消費が多い等見えすいた言い訳をし王子達を連れ出していた。 コーヒーを淹れ何となく椅子に腰をかけ、昨日からの夢を覚えてる部分だけ整理してみた。 まず殺されるのが、鎌イタチの世界でお世話になった『まーちゃん』というのが気に入らない。 キャバクラへよく行く旦那の芭流(ばる)ならまだしも、よく働き剣術の達人が夢で2回も敵襲に遭い技も使わず殺されるなんて。 おまけに今日は振り返り様に『百合!』と呼んでいた。 何とかしろよ……と言わんばかりの表情で後味も悪いし、血塗れというより両サイドに誰かいて三途の川に引きずり込まれる感じに見えた。
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