楓の心配事

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リュックと双棒を受け取り、歩兎さん達と合流して地下に向かうと扉を潜った。 森の中にひっそりと佇んでいるので、すぐ近くに出たとしても誰かに見つかる恐れも少なく立地としては最高の場所だった。 鎌イタチのまーちゃんの所は背の高いススキに覆われていたが、ここは木々に囲まれた大人の隠れ家という雰囲気だ。 三階建ての建物はレンガ造りの壁で見た目は可愛いが、そこそこ広さもありここに入れる人は裕福に違いない。 裏口から入り警備の人に指示されて狛さんが何かを記入すると、一人ずつゲストカードを渡され首からぶら下げて奥に進んだ。 階段を使って三階に上がると、扉が開いた部屋から明かりが漏れていて、会話する声が聞こえてくる。 中に入る直線で歩兎さんが軽く深呼吸し、つられるようにドキドキしながら足を踏み入れた。 年配の男女……といっても顔がイタチで身体は人の者も居れば、見た目は人と変わらない者も混ざっていている。 歩兎さん達が挨拶すると早速楓さんの事を聞かれていたが、体調を崩したと伝えると、明らかにテンションが下がった表情をする人が沢山居た。 「まん丸で元気なタヌキ似の楓ちゃんがね……大丈夫なのかい、良くなるんだろうね」 「ええ、次は本人が来れますよ。今日は私達が代理でおはぎの詰め合わせ持って来たので皆さん沢山召し上がって下さい」 さすが交渉のプロは先程までの様子を隠し、作り笑顔の仮面はつけているが事情を知ってる上で見ると複雑な気持ちになる。 でもお重の箱を開けると小豆ときな粉のおはぎが沢山詰めてあり、思わず前のめりで見つめてしまう。 「後ろにいる子は誰だい?」 「楓の代わりで来てもらった月影百合、瑠里姉妹です。おはぎ配るの手伝って」 歩兎さんに紹介を受けてお辞儀をすると、二十人近くいる年寄り達に手分けをして渡していく。 一人二個ずつにしても十分おかわりが出来る量なので、羨ましいと思いつつ配り終えた。 「今日は楓ちゃんが来ると思って、ハンバーグステーク沢山用意したのにね」 「私はこの時期限定のポテトサラダやスープを準備したよ」 車椅子のタイヤを器用に回してご自慢のハンバーグを見せてもらったが、ソースがたっぷりとかかっていて美味しそうな匂いがたまらない。 ソースも肉の味が消えないようにかサラッとしていて、恐らく上品な味に違いない。 それぞれが好きな物を手に持ち食べているが、楓さんの為に色々準備して待ってたんだと思うと、彼女が最後まで来たいと言ったのも分かる気がした。
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