(青木 千春)

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「青春の~~馬鹿野郎~~」  少女漫画に出てくるような恥ずかしい台詞を屋上から大声で叫んだけれども、心は晴れるはずもなかった。 見上げると、清々しいほどの青空。  天候と私の心は全くリンクしていない…… 当たり前だけど。  「天気が悪くなってきましたね~」 「これは そろそろ ひと雨 きそうですね~」 私の心は今にも雨が振りだしそうだった。 雨傘なんか用意してないから、ずぶ濡れになりそう。 青木 千春 17歳。 私は人生で2度目の失恋をした。 戦いのリングにすら上がることすらせず、立ち見の席でただただ敗れるものたちを黙って見ていた。そんなことをしているから、戦わずして負けた。 「卑怯なやつだよね、性格悪いな…」 「最低なやつだな、最低、最低」 そんなことは分かっている。 告白もせずに、フラれた女子たちを見て心の中で自分じゃなくってよかった、まだ私には可能性が残っていると安堵していた。 そんな性格の悪い自分がいることも知っている。自分は何も行動を起こさないくせに、不平や不満は人一倍ため込む。 私が、人の試合を黙ってみている間に、 果敢に挑み続けていた挑戦者たちの中から、新しいチャンピオンが誕生した。 「庭野君 宮城さんと付き合うらしいよ」 高校生の男女交際はあっという間に広がる。高校生活で隠しこどをするなんて飼っているハムスターに日本語を覚えさせるくらい難しい。ましてや恋愛沙汰となればなおさら早い。 付き合い初めて1週間以内に大半の人物はそのことを知る。3週間もすれば、いわゆるスクールカーストの下層にいる人間たちもどこからかで耳にすることになり、知ることになる。そういった噂話をどれくらいの早さで知ることができるかで、自分が今スクールカーストのどの辺なのかをざっくりと把握することができる。
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