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終章 そして荒野の三兄弟
西部と南部隔てる大砂漠、ゴル。その大砂漠を、北へと歩く、三人組がいた。
「なあ、クウのアニキ?腹減らねえか?」
その三人組の、真ん中にいた一番大きな男が、そう愚痴を言った。
「もう少し我慢しろ、あと少しでナッタ族の村に着く。」
ゴ・クウは、イラつきながらも、ゴ・ノウを励ました。
ゴ・クウ達三兄弟は、砂漠のキンギン鉱山で、巨大な化け物クルサルと戦い、そして反人のハン一族の少女?ハン・クムが、元の世界に帰るのを目の当たりにした。
それが昨日の事であった。
キンギン鉱山で、塩を手に入れた、ジャイ・アンフツと別れ、事の顛末を報告すべく、西部の首都ジークテンに向かっている途中、意気なり乗っていた鉄馬と橇が故障してしまい、砂漠を歩かざるをならなくなった。
「ナッタ族の、支配地域であったのが、救いだぜ。」
誰言うと無くそう言うことで、今の状況である。
此の時の三人の出立ちが、ノウとジョウは制服である、灰色のジャケットとパンツ。ゴ・クウは、巫女にされた際、腰帯だけの状態になってしまったので、ハン・クムが身に着けていた、あの藤色の布を、ターバンの様に巻つけて、残りを肩に掛ける格好で、歩いている。
暫くすると、数頭のラクダに乗る一団に遭遇した。
「ゴ・クウの旦那、久しぶり。」
先頭の、ラクダに乗っている若者が、声をかけてきた。
「おう、ダツ!」
ナッタ族、ガル・ナン老の村の、ダツであった。
ゴ・クウ達は、ナッタ族ガル・ナン老師の村にいた。
先の仕事の、報酬の残りを渡す為と、砂漠を渡るための足である、ラクダを借りる為である。
「良く御出なすった、ゴ・クウ殿。歓迎しますぞ。」
言葉とは裏腹の、渋い顔をしたナン老がゴ・クウ達をもてなした。
「いやぁ、助かる。今日は色々な事が有りすぎて、もうクタクタだったんだ。」
ナン老の、口だけの労いにも、感謝の意を込めて、ゴ・クウが挨拶する。
細やかな宴がもようされ、散々だった一日を、ゴ・クウ達が噛み締めてる中、夜の帳が落ちていった。
翌朝、大型貨物車の一台が、ナン老の村を訪問した。
「なんだ?トウじゃねえか?」
ナン老の所で、朝食を採っていたゴ・クウが、出迎えた。
ジャイ・アンフツ率いる、アンフツ商会の所の若者、トウが村を、と言うよりゴ・クウを訪ねて来たのだ。
「よく此処が解ったな?」
食後のお茶を飲みながら、ゴ・クウがトウを、出迎えた。
「いやゴ・クウさん、サウバの町で、ゴ・クウさん達宛の手紙を預かりまして…。」
そう言うとトウは、持っていた鞄の中から、一通の封書を差し出した。
「アンフツの親父さんが、多分此処だ言うので…。」
まあ、通信機も何もないので、緊急に連絡を取りたい場合は、人に頼むしかない。
ゴ・クウは受け取った手紙に、さっと目を通した。
「けっ!」
ゴ・クウは、表情を険しくして、何かを吐き出した。
其処へ、朝食を済ませた、ゴ・ノウとゴ・ジョウが、やって来た。
ゴ・ノウが、ゴ・クウの不機嫌な顔を見て、何があったのか?と、聞いてきた。
「ほれ、コレ!」
ゴ・クウは、持っていた手紙を、ゴ・ノウへと、手渡した。
「フムフム…、あぁ、コイツは…。ヒデェな。」
と、ゴ・ノウは、声だけ同情した。が、その顔は、愉快そうに歪んでいる。
「何?どうしたの?」
後ろから、ゴ・ジョウが声を掛けてくる。
「ん?ホレ。」
ゴ・ノウがその手紙を、ゴ・ジョウに差し出した。
「何々、特別機動隊一番隊隊長、ゴ・クウ殿。一番隊隊長の任を解き、国境特別警備隊隊長に処する。西部執政官シャ・カ也、と…。」
ゴ・ジョウは、其処まで読み上げて、
「アニキ、こりゃ島流しだね?」
と、これも愉快そうに言う。
「てやんでぇ!」
ゴ・クウ達が、ワチャワチャしているその横で、トウがさっきからキョロキョロしている。
「ん?何やってんだ?オメェ?」
ゴ・クウが、トウの挙動不審さを見咎めた。
「いやあの、クムちゃんは、未だ就寝中なのかなって…。」
トウは、一連の顛末を知らされていないのだった。
「そんなもん、居ねえよ!」
「ギャ!」
ゴ・クウは思いっきり、トウを蹴り飛ばした。
終
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