第13話 条件

2/3
119人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「わかりました」 鴉攻と言う男は葵の返事に唇の端で笑って見せた。 嘲り笑うような嫌なものだ。 握った要の手が教えてくれる。 落ち着けと、冷静になれと… 「せやったら、ここにおる碧刃と夫婦になって頂く」 どんな条件を突きつけられるかと思ったら、全く予想外のジャブが来た。 思わず碧刃と顔を見合わせる。 碧刃は意外だったらしく、豪快に首を振って見せた。 「それ、どんな冗談……」 本人も知らない、合意もない、明らかに身勝手な条件と言うことだ。 「冗談やあらしまへん。姫様には総帥となり、碧刃を夫とし、ここで暮らしてもらいます。碧刃の子を産んでくだされば、蒼麻殿との子を作っても構いまへん」 冷静に、なんて通り越して葵は唖然としてしまった。 『証』が出た事で要が危惧していた事態や、架南に強いられていた境遇、それをまざまざと見せられた、そんな気分だった。 そもそも、こんな手を使い人を操ろうとするのだから、まともな人物ではないのだ。 「それが何になるんですか?」 「一族の血を深められるんどす」 まともに対応するのが若干馬鹿馬鹿しく思えてくる。 (とにかくこの場は切り抜けないとなんだけど) 要が手をぎゅっと握ってきた。 先程より力がこもった指先に、安心する。 きっと要が受けた何らかの力は、時間の経過でどうにかできるものなのだ。 そして、ある程度動けると要が判断するまで、今の体勢を変えない。 時間を稼げばいい。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!