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「要くん、分家出禁なの?」
成り行きを見守る要の顔つきは意外に穏やかで柔らかい。
「ええ、まあ……」
「止めなくていいの?」
要は何時迄も眺めている様な姿勢だ。
だけど、まだ日も高いしこんなところを人に見られたらと葵は気が気ではなかった。
「止められるかな?」
クスッと笑う要に、葵は胸の奥に僅かな苛立ちを覚える。
「じゃあ、私が止める」
「…………え?葵、ちょっと」
歩み出すと要に腕を掴まれた。
「止めるって、どうやって」
「話しかけてみる」
「………本気??」
要から温かい眼差しが向けられて葵は眉根を寄せる。
(絶対バカにしてるっ)
そんな葵の体を要が突然抱え上げ、斜め後方へと飛び退いた。
急な着地の衝撃に、葵は舌を噛みそうになる。
見るとさっきまで立っていた地面が黒く焼け焦げ、浅く掘れていた。
「こんな相手に話してもどうにもならない」
要がキャンピングカーの上で弓を構える少女を見やる。
「じゃあ、どうするの?」
「そうだな………」
今にも放たれそうな火矢に、青年が少女と要との間に立ちはだかった。
「止めや、朱奈!」
「碧刃、許せよ」
少女に向かって叫ぶ青年の背中に要が声をかけ、青年が振り返ると同時にキャンピングカーの奥から大きな水蛇が首をもたげる。
そうなってみて初めて少女も青年も葵も、要が能力を使っていたことに気づいた。
悲鳴をあげる間も無く、少女の体を水蛇が飲み込んだ。
ずるり、と水蛇がキャンピングカーの屋根から滑り降りる。
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