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「朱奈っ!!」
青年が水蛇へと駆け寄り、要は葵を腕の中から下ろした。
「気づかれずにあのサイズの水蛇を用意するのに時間がかかったんだ」
下ろしたついでのように腰に手を回される。
「葵の説得も見てみたかったが」
してやったりな唇の端に笑みを乗せる要に葵は目を逸らした。
寄せられた顔の距離が、キスの距離に思えた。
「それより、あの子……」
要の腕から逃げるように葵は水蛇の元へと向かう。
近づくと水蛇に四肢を拘束され地面に転がる少女が、噛みつくような目で睨み上げてきた。
くりくりと大きな瞳、その目鼻立ちが青年と瓜二つ。
(双子なんだ、この二人!)
小柄な体つきにしても、癖のない真っ黒な直毛も、それを裏付ける。
火と水の、相反する能力を除いては。
「立派になったな、二人共」
要がしゃがみ込む青年の横に立つ。
「黙れ、このスケコマシ!」
口から火でも吐きそうな勢いで少女が要に吐き捨てた。
「やめえな、口汚いな、ほんまに……」
青年が少女の鼻をつまんだ。
「力で敵わへんのはわかったやろ、俺にすら勝てへんのやさかい、けったいな事しいひんで話し合おうな」
「あほ言うな、手加減したったんや」
鼻をつままれ潰れたような声で少女が喚いている。
(やだ、可愛い)
葵は青年の隣にしゃがみ込み、少女に微笑みかけた。
「初めまして、日向 葵です。よろしくね」
「よろしゅうしたないよ、おばちゃん……」
「おば、おばちゃん?」
要と同じくらいの少女におばちゃん呼ばわりは、流石に葵は衝撃を受ける。
「うわ、えらい堪忍な、姫さんっ、許したって!」
青年が狼狽えて少女の口を塞いだ。
「自己紹介遅れたけど、これが朱奈、俺は碧刃、よろしゅうお頼申します」
はにかむ青年の笑顔が嘘みたいに爽やかで、葵は一瞬目を奪われた。
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