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「そないな事より、なんでわかったんや?」
好奇心か、負けず嫌いか、碧刃が真摯な眼差しを向けてきた。
「どこらへんから魂胆がばれとったん?」
「茶番が過ぎたな」
「は?まさか最初からなんて言わへんよな」
余りに必死な面持ちに自然と笑みが浮かんだ。
信号で停車し、助手席を見ると眉を寄せて碧刃が腕を組み考えこんでいた。
「そうなん?え?なんで??」
「その装束姿でどうやってあそこまで来たんだ?」
「そら車で……………ああ、そやな」
今日日、装束姿は流石に目立つ。
本当に急襲をかけるなら、日中は不利。
攻撃も虚仮威し、双子は能力の半分も出してはいなかった。
「朱奈のは特に目立つまくりやな。あ、そこ曲がったら真っ直ぐで到着やで」
車が動き出し、碧刃が道を指す。
「とりあえず今話したことは忘れろ。鴉攻の指示には従うほうがいい」
「ええで、俺はあんたの側につくし、どう思われても」
生真面目な、一点の曇りもなさそうな顔で碧刃が告げた。
純朴で素直な反面、そこに危うさもある。
「心象を悪くするな。お前はお前の分家での立場を守れ」
納得がいかず碧刃は思い詰めた表情で俯いた。
「お前一人の問題じゃない。朱奈も巻き添えになるんだ。己れの感情だけで動くなよ」
「了解や……」
すっかり悄然とする碧刃の横顔を見ていると何故なのか、久しぶりに会ったとは思えない親しみが込み上げる。
要は思わず碧刃の頭に手を置いた。
「次の信号で停まるから、葵を前に」
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