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矢館悠斗を名乗る前のクールタイムを分家で過ごした。
当時は本家、分家の区別なく、首領は鴉攻の父親である四塚 平是、その平是に招かれ滞在したのだ。
狙いは墓守の血、あわよくば屋敷にいる誰かと懇ろになればとの打算があったのだろう。
四塚の屋敷には驚く程に、年頃の女たちが集められていた。
藍奈は、その中の一人。
擦り寄る女たちとは違い、遠くから冷めた一瞥を投げてくるだけの女だった。
だから唯一、自分から声をかけた女。
一族の血を嫌い、習わしを嫌い、四塚を嫌っていた。
『うちはあんたが嫌いや。その綺麗な顔に騙されへんで』
開口一番そう言われたことを良く覚えている。
世慣れていて物分りが良く、男女の差なく物怖じしない発言、それでいて砕けた部分も見せる。
付き合い易い相手だった。
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