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第12話 交渉
「久方ぶりどすなぁ、蒼麻殿。いや全く恐ろしい程にお変わりあらへん」
「鴉攻殿は随分と風格が出ましたね」
見下ろしてくる鴉攻の眼光には、凡そ親しみなどない。
忌まわしいものでも見るかの様な冷たさ。
「して、姫君はどちらにいてはるんや?もしや、あの仰々しい車の中どすか」
分かっているだろうに、鴉攻は態とらしく片眉を上げ車を見た。
「姫君なんてものは知りませんね」
背後で数人、動く気配がある。
武力行使には出ないだろうと思っていたが、そうでもないようだ。
「なんか行き違いがあったのでっしゃろか。此方の条件を承諾頂いた上での来訪では」
「条件とは、あの無理難題の事ですか?」
「無理難題?こら笑止。認知は義務、姫様がそれに相応しい場に収まるんは当然のことやろう」
鴉攻が出した条件は、碧刃と朱奈の認知、そして葵が分家に入る事だった。
分家はその血を保持する為に、一族内の婚姻を繰り返し、その血を、その能力を守り続けてきた。
だがそれでも能力を持つ者は減っている。
そうなれば血を守ろうと動き出す者が現れる。
西園寺グループにおける堂形のように。
鴉攻は、それに加え、一族の統合、分家からの脱却を目論み、実質共に本家へと伸し上げたいのだろう。
その為には、墓守の唯一の落とし胤、そして総帥の資格を有する葵が必要なのだ。
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