第12話 交渉

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鴉攻の能力、影盗り(かげとり)。 目標の体の一部を摂取することで、目標を麻痺させる。 「さすがどすな、膝をつくだけで済むやなんて」 「蒼麻はん」 耐えきれない面持ちで碧刃が駆け寄ってきた。 「すんまへん……もう無理や。見てられへん」 右肩を掴む碧刃の手に力が込められる。 「……まだだ、動くな」 碧刃は次に鴉攻が何かしたら動くつもりだ。 それはまだ、早い。 鴉攻は墓守を殺そうなどとはしない、葵に関しては傷つけることすら避けるだろう。 葵が冷静でさえあれば、囚われることはない。 ないのだが…… 「貴方が何かしたんですね」 鴉攻に食ってかかる葵の口調からしても冷静にとは縁遠い。 「交渉の一環どすえ。蒼麻殿は手強いさかい」 「これのどこが交渉なの?彼を元に戻して!」 「姫様がわたしの言う事に従えば、すぐにでも」 一歩前に出る葵の手を、要は掴む。 麻痺のせいで握るのもやっとな状態、顔は上げられない。 挑発に乗ってはいけない。 冷静に、感覚を研ぎ澄まし、自分の奥底にある能力(ちから)に全神経を集中させる。 「わかりました」 深く息を吐いたあとに、葵が応える。 手を握り返して。
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