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鴉攻の能力、影盗り。
目標の体の一部を摂取することで、目標を麻痺させる。
「さすがどすな、膝をつくだけで済むやなんて」
「蒼麻はん」
耐えきれない面持ちで碧刃が駆け寄ってきた。
「すんまへん……もう無理や。見てられへん」
右肩を掴む碧刃の手に力が込められる。
「……まだだ、動くな」
碧刃は次に鴉攻が何かしたら動くつもりだ。
それはまだ、早い。
鴉攻は墓守を殺そうなどとはしない、葵に関しては傷つけることすら避けるだろう。
葵が冷静でさえあれば、囚われることはない。
ないのだが……
「貴方が何かしたんですね」
鴉攻に食ってかかる葵の口調からしても冷静にとは縁遠い。
「交渉の一環どすえ。蒼麻殿は手強いさかい」
「これのどこが交渉なの?彼を元に戻して!」
「姫様がわたしの言う事に従えば、すぐにでも」
一歩前に出る葵の手を、要は掴む。
麻痺のせいで握るのもやっとな状態、顔は上げられない。
挑発に乗ってはいけない。
冷静に、感覚を研ぎ澄まし、自分の奥底にある能力に全神経を集中させる。
「わかりました」
深く息を吐いたあとに、葵が応える。
手を握り返して。
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