第13話 条件

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「深めてどうするんですか?」 「遊んではりますか……」 早速胸の内を悟られて葵は一瞬たじろいだ。 「素朴な、疑問です」 平静を装う葵に鴉攻は小さく鼻で笑った。 「まあ、ええでしょう。そう言うた疑問には後程お答えするとして、条件を飲んで頂くにあたり、その証を見して貰いまひょ」 葵は内心どきりとして、慌てて気持ちを落ち着かせる。 一番厄介な流れがきた。 証、が何を指すのか、それによってかなりヤバい。 単純に胸の『証』を見せるなら、簡単な部類。 誓約書に署名も、あとでどうにでもできる。 碧刃との誓いのキスを見せろ、なんて辺りもセーフ… (セーフか?要の前でそれはセーフになるのか?命をとられるよりはセーフくらいのレベルだよね) 思った以上に自分の中の妥協点が狭いことに、葵は焦った。 「まずは交渉成立の握手を」 それだけに、鴉攻からの申し出はかなり楽なものに思えてしまった。 鴉攻が縁側から降りてくる。 差し出された鴉攻の手を、葵は握った。 「っいた!」 ぎゅっと握りしめられたとたん、手の平に突き刺すような痛みが走る。 碧刃が立ち上がろうとしたが、それを()めたのが分かった。 葵が顔をしかめても、鴉攻は手を離そうとしない。 「葵殿は一族の総帥となるお方」 更に、握る指に力がこもる。 鴉攻の一つしかない瞳がその執念を垣間見せた。 葵は手を振り払い、手の平を確認する。 針で刺された様な痕がくっきりと残り、血が滲んでいた。 ただの握手ではなくて、これが狙いだったとわかったが遅い。 鴉攻が自分の手の平を舐めていた。 一瞬見えた鴉攻の舌先に滲む赤い血がやけに鮮やかに見えて、葵は込み上げる不快感を噛み締める。 「……能力は、麻痺だけちゃうんや。暗示が」 ボソッと碧刃が呟いた。
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