第2話 目的

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この事態、圧倒的に戦力が足りない現状… 唯一、能力で対抗できる戦力は要と和希(かずき)だが、和希が離脱している今、要のみとなる。 それを痛いほど、思い知らされた。 橘 詠一(たちばな えいいち)は未だに消息が知れない。 和希に火傷を負わせ、葵を拉致し監禁、その割に助けに来た要諸共あっさりと逃した。 追手もなく、動きも見せない、狙いも絞り込めないままだ。 まだ何も終わっていない。 「京都には一族の分家があるのです」 祥吾の隣に腰掛けながら篠宮 大和(しのみや やまと)が静かに口を開く。 「樹海の聖域に移り住む際、それに反対し離散した者の子孫たちです」 細いフレームに縁取られた眼鏡を指先で押し上げ、篠宮は眉を寄せた。 伸びた背筋に、無駄がなく切れのある仕草、丁寧で落ち着いた物腰は実直さを感じさせる。 情報屋と呼ばれるほど、多方面の情報収集に長け、高度なハッキング技術を用しているらしい。 今は祥吾の右腕として、スケジュール管理から運転手まで幅広くサポートしている敏腕秘書だ。 年齢不詳で謎が多い人物だが、表情の変化が乏しい点は要に似ていて葵は親近感を抱いてしまう。 「分家は首領を筆頭に能力者が20人弱、一族内の結束は固く、余所者が入り込むのは難しいですね」 極めて無表情で篠宮が告げる。 「まあ、俺たち余所者だしな」 祥吾はそう言って笑った。 (分家ってことはコッチが本家?だけど、余所者?) 離散したと言うフレーズからも、会話の流れからも、今回のスカウトは難問らしい。 本家と分家の仲が悪いらしいことは良く分かった。 「あの、要くんは行くんですか?」 スカウトとなると、要はなくてはならない立場に思える。 気になって聞いてみたが、祥吾と満琉が気まずそうに顔を見合わせた。 「要は行けない(・・・・)かな」 祥吾が微妙な言い回しをする。 行かない、ではなく『行けない』。 「今の要は、葵ちゃんと別行動はないわね。片時も離れたくないって感じだもの」 満琉が即座に台詞を割り込ませた、ように見えた。 隠したい何かがあるかのように。 「今朝も渋々出かけただろ」 「もぉ、ラブラブね」 二人のやり取りがすでに誤魔化すための何かに見えてきて、葵はそれ以上の追求をやめた。
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