真っ白な雪の降る、広大な山奥の一角で、

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真っ白な雪の降る、広大な山奥の一角で、

外に出たら、一面が真っ白だった。 一歩、踏み出す。 キシキシと音が鳴って、気持ちいい。 これは、雪。 ふわふわで、わたあめみたいな、そんなものらしい。 クラ()は、初めて見る。 クラがいたのは、雪が降らないところだったから。 「ふわふわ!気持ちいい!」 「クラ、そんなはしゃがない!」 お母さんだ! 本当は血がつながっていないらしいけど、クラはそれでもいい。 クラは、森に捨てられてたんだって。 そんなクラをお母さんは拾ってくれたの。 お母さんは、ユエルって言うらしい。 クラの名前は、お母さんが付けてくれたの。お母さんの出身地では、‘‘夢‘‘って意味なんだって。 そしてクラは、今日この地に引っ越してきたの。 初めて見る雪に、クラの心は幸せでいっぱい。 お母さんを置いて雪に飛び込む。 ふわふわで、冷たくて、幸せ。 ここで寝れそう! そう思ってたら、お母さんんが近づいてきた。 きっと、クラの思ったことに気付いて、何か言いに来たんだ。 「今、ここで寝れそう、とか思ったでしょ?ここで眠っちゃだめよ?眠っちゃたら、死んじゃうかもしれないんだから」 やっぱり、そうと思った。 でも確かに、それはごもっともかもしれない。 クラは、雪に埋もれた体を起こして、返事をする。 「はぁーい」 少し、寂しい。 お母さんはとっても鋭くて、私の考えてること、なんでも気付いちゃうんだ。 だから、いたずらしようと思っても成功したことはない。 むぅ~っ! 出し抜かれてばっかでつまんない! 前に一度、そういったことはあるけど、まともに聞いてもらえなかった。 今日こそ、出し抜いてやる!
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