幸せをともに

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幸せをともに

 枯れ葉が敷き詰められた公園に、子どもたちの高い声が響き渡る。太陽がコトっと傾き、薄汚れたベンチから、二人分の影が伸びてきた。  来月、結婚する。私は長く付き合った男性と一生をともにすると誓う。たくさんの思い出話があって、募る想いも自分では抱えきれず、隣の彼に向かってぽつりぽつりとこぼしている。話をしながら、これからの生活への希望と不安が瞳から溢れ出す。 「お前は本当にすぐ泣くなあ」  自分だって見たこともないくらい情けない表情をしているくせに。お気に入りのパーカーの袖を伸ばして目頭を拭ってくれる。私のせいで制服のセーターが右袖だけ少し伸びてしまった、そんなこともあったね。そんな彼の優しさが今は苦しいほど私の胸を締め付ける。 「うわあ!」  大きな声につられて見ると、風に煽られて子どもの帽子が飛んでいた。 「私あなたと出会えて本当に幸せだよ」  帽子が地面に落ちるのを見届けて、そっと彼に向き直った。二人でなんとか笑顔をつくる。  来月、私は結婚する。
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