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 カフェテリアで昼ご飯を済ませ、カフェを出た所にあるロビーで、次の授業が始まるまで休憩することにした。ロビーもカフェ同様、一面がガラス窓になっている。僕はガラス窓に向かって、庭を眺められる場所に配置されたベンチソファに腰を下ろした。  目の前にはつつじの垣根があり、濃いピンクの花を所々に咲かせていた。その周りを蜜蜂が飛んでいる。今日は夏のような暑さで、僕はTシャツ姿だった。ロビーでくつろぐ他の学生たちの楽しそうな声をシャットダウンするように、僕はイヤホンを耳に嵌め込んだ。アプリを立ち上げて、適当な曲を選ぶ。そのままいくつか溜まっていたメッセージの返信を打つ。  急に視界が暗くなったなと思い顔を上げると、ガラス窓の向こう側、つつじの垣根を挟んだ所にいつの間にか長田が立っていた。幽霊のようにぼぅとした表情で僕を眺めている。 「うわっ」  僕は驚いて思わず声を上げた。 「いつの間にいたんだ? こんな所に突っ立って、何してるんだよ。びっくりしたじゃないか」
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