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 鳩が死んでいる。  舗道の真ん中に、蹲るようにして。真っ赤な眼が見開いたまま、空を見つめていた。地面に降り立った所を車に轢かれたのか、体の下部が潰れ、数枚の羽根と共に、臓器がアスファルトに飛び散っている。臓器は原型をとどめていなく、無残な亡骸だった。  公園や街中でよく見かけるカワラバトだ。灰色の羽に首の辺りには、見る角度によって、紫や緑に輝く構造色を持つ。  自分が殺した訳ではないのに、いたたまれない気持ちになるのはなぜだろう? それが普段の僕の生活には関係のない、そこら中で見かける鳩だとしても、やはり生き物が「死んでいる」姿を見るのは、嫌なものだ。亡骸のすぐ傍を足早に通り過ぎようとした時に、「うわぁ、鳩が潰れてるぅ」と、甲高い声がして、僕は顔を上げた。 丁度、道の向こう側から、こちらにやってくる小学中学年生くらいの男の子だった。頭には赤いヘルメットを被って、黒いマウンテンバイクに乗っている。隣には、彼の母親らしい女の人が、並走している。彼女の自転車の荷台には、チャイルドシートが設置されており、幼稚園児くらいの女の子が乗っていた。
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