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足でゴミを掻き分けスペースを作ると、ユマちゃんをそっと床に置いた。少しの間だけ、辛抱してくれ。タカトは顔をあげると、ひっと声を上げて、肩を震わせた。タカトを守るように前に立ち、彼のランドセルを押して、玄関の方に突き出した。
奥の寝室に、先程外に閉め出したはずの男が立っていた。畳の床に割れたガラス片と拳くらいの大きさの石が転がっていた。ガラス窓を割って、部屋の中に入って来たらしい。そうまでして、このゴミだらけの部屋に戻りたいのか? イカれてる。
男はふらふらとした足取りでこちらに近づいてくる。厭らしい笑みを浮かべていた。
「璃空、扉が開かないよぅ」
タカトの泣き声が聞こえて、後ろを振り返る。
「チェーンが掛かってるんだ。外して!」
タカトがチェーンに手を掛け、部屋の外に出た。そうだ、それでいい。誰かに助けを____
鈍い音がして、後頭部に痛みが走った。膝から崩れるようにゴミの中に倒れる。何が起こったのか解らなかった。後ろからシャツの襟元を掴まれ、首が絞められ、苦しくて顔をあげた。ヘラヘラと狂った笑いを浮かべる男の姿が目の前にあった。手には木製のバットを握っている。
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