完璧な幼馴染 sideH

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 僕には一人の幼馴染がいた。  その子は突出して何かが出来るわけでもなく、特別な才能何て何もないどこにでもいるような男の子だった。 「遥くんは天才ね」 「うちの子も遥くんを見習ってほしいわ」  良くも悪くも何でもそつなく熟す僕は、大人や周りの同級生にちやほやされていた。  褒められて嬉しくないわけがなく、さらに欲求を満たそうと努力していると気づけば僕自身なんて誰も見てくれなくなっていた。 「遥くん・・・・・・付き合ってください!」  話したこともないのによく言うよね、どうせ自分のステータスにしたいだけ 「なあ、バスケ一緒にしようぜ!」  僕を連れてきた君にも恩恵が入るね 「俺達、最高のダチだよな!」  裏で僕の名をいいように使っているのは知っているよ  皆が欲しがるのは僕自身ではなく、僕の学歴、容姿、能力それだけだった。  どうしようもない空虚感に襲われ自暴自棄になりかけていた、そんな僕を救ってくれたのはユキだった。 「やっぱりすごいよハルカ!がんばってたもんな!」 「そんなことない」 「そんなことあるって!」 「本気で言ってるの?」 「どういうこと?」  僕のやることすべてに目をキラキラと輝かせ僕を褒めてくれた。僕の事を誇りだと言ってくれた。  純粋な瞳で僕を見てくれる、理解してくれる。  それが何よりもうれしかった。  彼の為にもっと頑張ろう、そう思い大人たちが喜ぶことを何でもこなした。  すべてはユキのあの笑顔を見たい、それだけだった。  いつからだろうか、ユキが笑わなくなった。 「ユキ!」 「・・・」  追及しようとして避けられたときに原因の一端が僕自身にあることは確信したが、本心を理解することはできなかった。させてくれなかった 「幸宏遊ぼうぜ」 「おう、今行く!」  僕に対する風当たりは強いが、僕意外には変わらず明るいユキのままで、そんなかrネオ周りにはたくさんの人がいて毎日楽しそうに笑っていた。  あの笑顔は僕だけに見せてくれていたものだったのに、気付けばユキは僕意外のすべてにあの笑顔を見せていた。  何がいけなかったのか、僕には当然理解していた。それでもそれを否定したい僕もいた。  そうでもしないとユキも僕のうわべだけを見ている大人たちと同じになりそうで、そうなってさったら僕は本当に独りぼっちになってしまう気がした。  心に黒い靄が渦巻いた 「遥くん、話って何かな?」 「実はお願いがあって」  僕は様々な手を使ってユキを孤立させた。  ユキが最後に頼れるのは僕だけだと分からせるために、趣旨が何もかも変わっていたことさえも、もはやどうでもよくなっていた。  高校に上がった頃にはユキの周りには誰もいなくなっていた。  当たり前のように僕が考えた通りにことは進んだ。後は孤独になったユキに僕を与えるだけ。  君の味方は僕だけなんだよ、と。  いつもと変わらない学校の帰り道、校門前には知らない女の子達がたくさんいて、僕の行く手を阻む。 「桜くん!」 「ん?」  適当に返事をしながら、視線を逸らしてユキのいる教室の方を向いた時、僕は運命を感じた。 「あ、ユキ・・・・・・」 「え?」 「ごめんね。教室に忘れ物したみたい」  女の子達を振り払い、全速力で走った。  視線すらも交わすことが難しくなっていた中で見上げた瞬間に視線があう。これを運命と言わずしてなんという?  非現実なことを言っているのは重々承知しているが、しばらくぶりに見た暗く淀んだ瞳を見て走らずにはいられなかった。  会いたい、近くで見たい。声を聴きたい、早く・・・・・・早く!!!  その瞳に映るのは僕だけでいい。
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