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2人のレイジと昔語り
駅前では人々が行き交っている。
ホームの方からはアナウンスの声や電車の走る音が響く。
駅前の広場で立ちすくむ那須カナタは腕時計に視線をやりながら、とても困っていた。
「ねぇ、いいじゃん?」
「そうそう。一緒にちょっと遊ぶだけでいいからさぁ」
カナタは二人組の軽薄そうな若者に声を掛けられていた。
若者といっても自分とそれほど大きく年齢が離れている訳でもない。大学生らしき男の子の二人組。しかし社会人になってからは学生を見るとやけに眩しく感じるなぁなんて検討違いの感慨にふけりそうになる自分自身をカナタはいさめた。
カナタはにこりと微笑んで、二人組に向き合う。
「ごめんなさい。今は人と待ち合わせしていて」
「えーっ! もしかして彼氏?」
「あー、そっか、お姉さん美人だもんなぁ」
大学生らしく軽いノリで褒めたり残念がったりする姿は、少し愛嬌があった。
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