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目を覚ますと、見たことのない建物があった。建物は二階建ててで、こじんまりしていて。ガラス板の前に立つと、突然開いたから驚いた。魔法のドアだろうか?
「いらっしゃ~い。お客さん、こっちこっち」
前髪がボサボサでエプロンをした人が、オレを呼んでいる。恐る恐るその人に近づき店の中に入ると、ガラス板が閉じて二度目の驚きだ。
「あの。ここ、どこですか? オレ、知り合いに転送魔法使われたみたいで……」
「あーそれなんですけどね? 魔王さんが借りた魔法が、料金不足で使えなくて。魔王さん今呼べないから、代わりに貴方を呼んだわけですよ」
「魔王……マーレは? マーレはどうなったんです!?」
その人物を隔てている棚から身を乗り出すと、その人は困ったように対応する。
「唾が飛びますよ~。ちゃんと説明してあげますから! まずは料金を払ってください!」
「料金って言っても……財布がなくて……」
ポケットの中にも財布はない。すると店員は指差した。見ると、いつの間にか小銭袋が首からぶら下げてあった。
「サービスです。貴方は通貨を持っていませんでしたが、ここに呼んじゃったので特別ですよ。でもそれでも足りません〜」
「ええっ。じゃあどうすれば……」
マーレがなんの魔法を借りたかは知らないが、このままじゃ無銭飲食(?)になってしまう……! それだけはだめだ!
「何か通貨の代わりになるもの……」
「ん~。料金を払わなくてもいい方法、あるんですけどねえ」
「えっ。本当ですか!?」
それがあるならそれで良いのではないか? いいことを聞いたぞ!
「じゃあ、この誓約書にサインしてくださいね~」
パッと出された白い紙と万年筆。色々書いてあったが、読みづらかったので無視した。
「あ、無視しちゃいけませんよ、無視しちゃ。俺が怒られちゃう」
「だって読むの大変だから……それより、これなんの魔法ですか?」
「記憶を封じる魔法ですよ。ステラさんの記憶を封印するそうです」
「えっ!?」
何故そんなことを? オレは即座に嫌だと返事をした。
「嫌と言っても……」
「なら、この魔法の対価は払いません! 通貨もお返しします!」
「え〜困りますよ〜! 一度侵入したら、もう魔力はついちゃうんですから〜!」
どくりどくり。心の黒いもやもやが浮かぶ。何故、マーレはこのようなことをした? 一体、何が起こってる? 痛い。胸が痛い。胸を抑えていると、その人がニヤリと笑った……気がした。
「お客さん、マーレさん、ピンチなんですよ。お客さんは、マーレさんのために世界と戦う覚悟、ありますか?」
マーレ。ああ、マーレ。お前に早く会いたい。気持ちが溢れてくる。自分という器から溢れ、爆発しそうだ。まるで、魔法にかけられたような……。
「覚悟があるなら、教えましょう。この世界の成り立ち、人間達の愚かな行い。貴方の思いが、世界を救うのです」
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