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 星が好きだった。 漆黒だが(ドブ)のような汚水は存在せず、綺麗に墨を垂らした星空に点在する星が好きだった。 無数に散らばるそれは、どれも同じ輝きをしておらず。一つ一つが違う輝きを纏い、存在していた。 彼の瞳は星のように綺麗で、輝いていた。初めて彼と対峙した時、綺麗という単語が口から漏れそうになった。 だが、今の彼は違う。禍々しい背景を背に自分(わたし)を見下ろす男は、不気味な笑みを浮かべていた。 私の上に馬乗りになり、私の心臓に手を当て、笑っている。私は、あの笑顔のキミが好きだったのに。  彼の黒髪と煌めく瞳が、夜空に浮かぶ星のようで綺麗だと思った。 だが今のキミの瞳は、術に侵され変色してしまった。黒く濁った瞳に写る私は、ひどく怯えていた。 何故こうなった、何故こんなことになった。人類の希望の星として(まおう)を倒すために送り込まれた彼は、何故こうなったのだ。 いや、違う。私が、こうしたんだ。 星を落としたのは、私だ。
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