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1章 土の匂いがする
東京を出てたった1時間だというのに、車窓からは信じられないくらい瑞々しい緑の風景が広がっている。
遠くに見える薄むらさき色の山々には、ひとつひとつ名前があるのかなと、なんとなく考えていたら、車内放送が始まった。
間もなく那須塩原駅に着くらしい。
「降りる準備を」と言われても、たいした準備はいらない。
薄手のジャケットは着たままだし、荷物は肩からかける大きめのバッグだけだ。
今朝、大きめのバッグ1つ持って、1人で東北新幹線に乗ったいきさつを説明するのは少々面倒なので、簡単に言ってしまうと、昨日ふと思いついて、那須野が原に行くことにしたのだった。
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