4章 いつか来た道

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 夜食を食べた中学校の前を過ぎて市街地を抜け、国道を渡る。 僕には見慣れた風景だが、美咲ちゃんは物珍しそうに左右を見ている。 ホームタウンを自信を持って案内したいところだが、僕は、高校時代の記憶があいまいになっていて焦る。 新しい店も出来ているし、道も新しくなっている。 この道だったのかな? この辺りは、1番眠くて辛い夜明け前の時間帯に通ったから、記憶もあいまいだ。 半分寝ながら歩いていたもんな。 そして、だんだん辺りが白々してきて、近くの農園から「コケコッコー」と鶏が鳴くのが聞こえて、すごく眠くて疲れているのに、なんか不思議に感動したんだったっけ。 美咲ちゃんにそのときの不思議な感覚を話すと、 「スゴイ、鶏は夜明けに本当に鳴くのね? 私も聞いてみたい。」 と目をキラキラさせて言う。 僕も鶏が夜明けに「コケコッコー」と鳴くのを聞いたのは、あのときが初めてだよ。
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