6章 那須共同利用模範牧場

1/1
前へ
/25ページ
次へ

6章 那須共同利用模範牧場

 8時25分にホテルの駐車場に車を停めると、すぐに美咲ちゃんはホテルの玄関から出てきた。 「おはよう」 「おはよう、よく眠れた?」 「うん、綺麗な部屋だったよ。」 「ならよかった。」 僕はあんまりよく眠れていないのだが、今日はアドレナリン全開だから、大丈夫だろう。 アドレナリンの馬鹿力は、高校時代に経験済みだ。 美咲ちゃんを助手席に乗せ、那須山の方向に車を走らせる。 今日も良い天気だ。 日曜日だが、まだ朝の早い時間なので、那須高原を横断する道路もすいている。 「うわぁー、素敵」 と美咲ちゃんは車窓からの風景に声をあげた。 僕は、ちょっと遠いけど、那須町の共同利用模範牧場まで美咲ちゃんを連れて行くつもりだ。 途中、眼下に広がる景色を写真に撮る観光客を見かけて、僕らも車を停める。 さらに車は少しずつ高度を上げ、30分程で那須共同利用模範牧場に着いた。 この辺りまで来ると、また一段と空気が澄み、緑の若葉が美しい。 車から降りると、美咲ちゃんは大きく息を吸い込んでにっこり笑った。 「ああ、気持がいい、素敵なところ。 あっちに牛がいるみたい。 行ってみようよ。」 美咲ちゃんは駆けだしそうな勢いだ。 白い柵に囲まれた広い牧草地で、たくさんの牛がのんびり草を食べている。 白と黒のホルスタイン種が多いが、茶色と白ブチの牛もいる。 今日は、茶臼岳もよく見える。 快晴だ。 「あれが那須連山で1番高い茶臼岳だよ。 ロープーウェイで山頂近くまで登れるんだけど、僕らは子供会や学校の行事で来て、茶臼岳にロープーウェイを使わずに登ったな。」 「へぇー、ロープーウェイでも登れるなら山頂まで登ってみたいな。」 「ロープーウェイを使うなら、その靴でも大丈夫そうだけど、今日は、美咲ちゃんを連れていきたい場所が、もう1つあるんだ。」 「えっ、そうなの? ここから近い?」 「そんなに遠くはないよ。そこに行ってもいいかな?」 「ええ、もちろん。」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加