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6章 那須共同利用模範牧場
8時25分にホテルの駐車場に車を停めると、すぐに美咲ちゃんはホテルの玄関から出てきた。
「おはよう」
「おはよう、よく眠れた?」
「うん、綺麗な部屋だったよ。」
「ならよかった。」
僕はあんまりよく眠れていないのだが、今日はアドレナリン全開だから、大丈夫だろう。
アドレナリンの馬鹿力は、高校時代に経験済みだ。
美咲ちゃんを助手席に乗せ、那須山の方向に車を走らせる。
今日も良い天気だ。
日曜日だが、まだ朝の早い時間なので、那須高原を横断する道路もすいている。
「うわぁー、素敵」
と美咲ちゃんは車窓からの風景に声をあげた。
僕は、ちょっと遠いけど、那須町の共同利用模範牧場まで美咲ちゃんを連れて行くつもりだ。
途中、眼下に広がる景色を写真に撮る観光客を見かけて、僕らも車を停める。
さらに車は少しずつ高度を上げ、30分程で那須共同利用模範牧場に着いた。
この辺りまで来ると、また一段と空気が澄み、緑の若葉が美しい。
車から降りると、美咲ちゃんは大きく息を吸い込んでにっこり笑った。
「ああ、気持がいい、素敵なところ。
あっちに牛がいるみたい。
行ってみようよ。」
美咲ちゃんは駆けだしそうな勢いだ。
白い柵に囲まれた広い牧草地で、たくさんの牛がのんびり草を食べている。
白と黒のホルスタイン種が多いが、茶色と白ブチの牛もいる。
今日は、茶臼岳もよく見える。
快晴だ。
「あれが那須連山で1番高い茶臼岳だよ。
ロープーウェイで山頂近くまで登れるんだけど、僕らは子供会や学校の行事で来て、茶臼岳にロープーウェイを使わずに登ったな。」
「へぇー、ロープーウェイでも登れるなら山頂まで登ってみたいな。」
「ロープーウェイを使うなら、その靴でも大丈夫そうだけど、今日は、美咲ちゃんを連れていきたい場所が、もう1つあるんだ。」
「えっ、そうなの? ここから近い?」
「そんなに遠くはないよ。そこに行ってもいいかな?」
「ええ、もちろん。」
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