1章 土の匂いがする

2/5
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
 有給休暇を取ってぐっすりと眠った金曜日の朝、なにげなくつけたテレビ画面に、栃木県那須塩原市の旧青木別邸と風に揺れる菜の花が写った。 ‐ああ、栃木県の那須高原か、行きたいな。 行ってみようか?  行けない理由はないし。  スマホで乗換案内を調べてみたら、東北新幹線は遅くまで走っているし、朝早くに出れば、テレビに写った「青木別邸」と周辺を見学しても、夜には東京の自分の部屋に帰って来れそうだ。 だから、日帰りの小旅行のつもりでいるのだが、念のため、コンパクトにまとめたお泊りセットをバッグの底に入れた。 この年になると、残業や飲み会の後に急にホテルに泊まることになることもある。 そんなとき、使い慣れた化粧品がないと安心して洗顔もできない。 だから、普段から泊まりになる可能性のあるときは、お泊りセットをバックに入れる。 今日も一応お泊りセットを持参したが、多分使うことなく今夜中に帰るだろう。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!