14人が本棚に入れています
本棚に追加
7章 那須疎水旧取水施設
僕は、那須町共同利用模範牧場を出て、車を走らせる。
午前10時を過ぎ、車は増えていたが、まもなく那須疎水旧取水施設に着く。
いぶかしげな表情で車から降りた美咲ちゃんに僕は説明する。
「那須野が原は、昔、水がなくて、お米がつくれない、人の住めない原野だったんだよ。
そこをなんとか開墾しようと、那須疎水をつくることを考えたんだんだ。
ここは、那珂川の上流から那須疎水に水を引き入れた取入口なんだ。
パソコンも重機もなかった時代に、紙とペンだけで、うまく水が流れるように傾斜を計算して、人の手で山をくり抜いて、石を積んで水路をつくって、当時の人達は、本当に凄いなぁと思う。
僕は小学生のとき、親に連れられてここに初めて来たんだけれど、何か忘れられなくて、中学生のとき、また車で連れてきてもらったんだ。
僕が、栃木県に帰って、土木関係の仕事をしたいと思ったのは、これを子供の頃に見たからかもしれない。」
「そうかぁ、大学4年のとき、裕也君が栃木県に帰って就職すると聞いたとき、ちょっと驚いたんだ。
裕也くんも東京で就職するものだと思っていたから。
裕也くんには、子供の頃から胸に秘めたものがあったんだね。」
「僕もここに来るのは久しぶり。
美咲ちゃんが那須に来てくれたから、僕も美咲ちゃんを案内して、久しぶりにここに来れたよ。
付き合ってくれて、ありがとう。」
「こちらこそ、良いところに連れてきてくれて、ありがとう。」
最初のコメントを投稿しよう!