7章 那須疎水旧取水施設

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7章 那須疎水旧取水施設

 僕は、那須町共同利用模範牧場を出て、車を走らせる。 午前10時を過ぎ、車は増えていたが、まもなく那須疎水旧取水施設に着く。 いぶかしげな表情で車から降りた美咲ちゃんに僕は説明する。 「那須野が原は、昔、水がなくて、お米がつくれない、人の住めない原野だったんだよ。 そこをなんとか開墾しようと、那須疎水をつくることを考えたんだんだ。 ここは、那珂川の上流から那須疎水に水を引き入れた取入口なんだ。 パソコンも重機もなかった時代に、紙とペンだけで、うまく水が流れるように傾斜を計算して、人の手で山をくり抜いて、石を積んで水路をつくって、当時の人達は、本当に凄いなぁと思う。 僕は小学生のとき、親に連れられてここに初めて来たんだけれど、何か忘れられなくて、中学生のとき、また車で連れてきてもらったんだ。 僕が、栃木県に帰って、土木関係の仕事をしたいと思ったのは、これを子供の頃に見たからかもしれない。」 「そうかぁ、大学4年のとき、裕也君が栃木県に帰って就職すると聞いたとき、ちょっと驚いたんだ。 裕也くんも東京で就職するものだと思っていたから。 裕也くんには、子供の頃から胸に秘めたものがあったんだね。」 「僕もここに来るのは久しぶり。 美咲ちゃんが那須に来てくれたから、僕も美咲ちゃんを案内して、久しぶりにここに来れたよ。 付き合ってくれて、ありがとう。」 「こちらこそ、良いところに連れてきてくれて、ありがとう。」  
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