2章 道の駅 那須別邸

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 "道の駅明治の森 旧青木家那須別邸前”でバスを降りて、横断歩道を渡り、運転手さんが指さしてくれた方向に歩く。 木々の間を抜けて行くと、昨日テレビニュースで見た菜の花畑の鮮やかな黄色が、突然目に飛び込んで来た。 「きれい…」 黄色は大好きな色だ。 青空の下、黄色い菜の花畑をキャキャ言いながら走り回る幼い子供がかわいい。 左手に見える洋館、旧青木別邸は、まるで白い衣装の貴婦人のようだ。 菜の花畑を歩き、深呼吸したり、写真を撮ったり、しばらく楽しんだ後、杉並木を歩いて青木邸に向かう。 明治の頃は、この道を馬車が通ったのだろうか。  青木邸は、近づいて見ると、貴婦人というよりも、家庭的な暖かみのある木の建物だった。 明治時代に建てられて老朽化していた邸宅を、市が修復して展示しているらしい。 館の中も復元されて、ダイニングテーブルやシャンデリア、浴槽などが、明治の貴族が生活していた頃のように展示されてている。  那須別邸の主人夫妻、青木周蔵子爵とエリザベート夫人の略歴や遺品も、展示されていた。 赴任先のドイツで、青木周蔵はプロシア貴族の娘のエリザベートに出会ったという。 そのとき、周蔵は既に妻帯していたらしい。 多くの人を傷つけたとしても、成就したい恋だったのだろうか。 周りを説き伏せ、困難を乗り越え、2人は結婚したらしい。 美しい夫人と愛らしい娘と並んだ青木周蔵の写真は、外交官らしい無表情で、心の内はわからない。  邸内の階段を登って2階に上がる。 テラスに出ると、先ほど歩いてきた館に続く杉並木が見える。 この場所からエリザベートも、館に続く杉並木を見ていただろうか。 杉並木に帰宅する夫の馬車が見えたら、エリザベートは急いで階段を降り、夫を出迎えたのかもしれない。 明治の頃の別邸での貴族の暮らしを想像した。  
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