3章 再会

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「本当に懐かしい、何年ぶり?」 「大学4年のとき以来かな。」 「駅前の横断歩道で、会って以来?」 「やっぱり気がついていたのね。」 「美咲ちゃん、男と一緒だったから、声かけなかった。」 「たまたま就職説明会で一緒になった人と、帰る方向同じだっただけ。」 「そうだったの。」 「裕也くんは、友達3~4人と一緒で、楽しそうだったね。」 「ハハハ、あいつら馬鹿みたいにいつも冗談ばかり言ってた。 今も、年に1度くらい会うよ。」 私は、運ばれてきたドリアをフーフー言って食べ、裕也君は、スパイシーな香りのカレーをパクパクと食べた。 「美咲ちゃん、ここまでどうして来たの? これからどうする予定?」 「路線バスでだよ。 バスの運転手さんに教えてもらって、この近くのバス停で降りたの。 菜の花畑と青木別邸を見るのが1番の目的だったから、後は、出来たらどこか牧場に行ってみようかなと思ってる。」 「それなら、僕が車で案内するよ。 迷惑でなかったらだけど…」 「迷惑だなんて、そんなことあるはずないじゃない。 実は、今日ここへ来たのは、裕也君のことを思い出したからなの。」 「えっそうなの?」 「昨日のテレビニュースで“栃木県那須塩原市の青木別邸”と聞いてね、裕也君の高校時代の話、那須野が原をひと晩中歩く男子校の遠足の話を思い出して、それで勢いで新幹線に乗って、那須塩原に来てしまったの。」 「ひと晩中歩く遠足?そんな話、したっけ? 美咲ちゃん、よく覚えてるね。」 「そりゃ覚えてるでしょ!あんな面白い話。私、笑い転げたじゃない。」 「そうだったっけ?」 「一晩中歩いてフラフラなのに、女子高の前に来たら、どの子もどの子も アドレナリン全開になって、女子高生の前をまだまだ元気なふりをして歩くんだって。 お調子者のグループが、余裕あるのを見せようと、頑張って馬跳びを披露したりして。 だけど女子高の前を通り過ぎて、交差点曲がったら、急にガクッと疲れが出て、近くの商店のおばあちゃんが手を叩いて応援してくれても、もうアドレナリン出ないし、ヘロヘロになって、最後の数キロをゴールの学校までトボトボ歩くという話。 裕也君から聞いたときも笑ったけど、その後も思い出して、私ひとりで笑ってたこともあるよ。」 「ホント、あの頃、僕らは馬鹿でした。 今も根本的には変わってない気がするけど、懐かしいな高校時代の歩け歩け大会。」 「この辺りは、その歩け歩け大会では通らないの?」 「この前の道を歩くよ、真夜中だけど。」 「えっ、そうなの? ここからどっちに向かうの? 歩け歩け大会のルート回ってみたいな。」 「それはいいけれど、この辺りは中間点を過ぎたくらいだから、僕らと同じルートをたどるなら、これから緩やかに坂を下って、ゴールの大田原市に向かうから、那須の牧場とは逆方向だよ。」 「牧場に行くのはまたの機会にするから、今日は歩け歩け大会のルートを回ってみたいなぁ・・・裕也くん達が馬跳びした場所とか。」  
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