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「晴人が待ってるから早く帰らなきゃ」
ルンルンで家に向かい自分の部屋に行く。
するとそこには不思議な光景があった。キャリーバックが横だおれになっている。もしかしてと思い、キャリーバックを開ける。
しかしそこにはちゃんと目を瞑った晴人がいた。少し悪臭もしてきた。鼻から血も出てたらしい。すぐに濡れたティッシュで晴人の顔を拭く。そして再びキャリーバックをしめ、元の位置に戻す。
なぜ風邪もないのに倒れてるんだ。置き方が悪かったか。親にバレたか。でも、バレて通報してたらもうとっくに捕まっているだろう。
テレビをつけソファーに腰を下ろす。
「6月7日から刈谷市の松葉高校に通っている男子高校生、葛城晴人、17歳が行方不明になった事件で警察は誘拐事件として捜査を開始しました。学校でのいじめや校外でのトラブルなども見当たらず理由もなしに誘拐されたと…」
私の晴人のニュースだ。
誘拐なんかじゃない。
私の家に晴人はいるよ
私と晴人が2人で住んでいるの。誘拐なんかじゃないんだから。夫婦円満よ。
晴人のニュースを見ていると急にベランダの方から大きな音がした。何かものが落ちたような音。
ベランダへ行き当たりを見回し確認をする。しかしなにか落ちた形跡はひとつもない。
「私の家じゃないのか」
また、ソファーへと座る。するとまた変な音が。次は私の部屋からだ。
「晴人が!」
急いで自分の部屋のドアに手をかける。だが、いつもより異常に硬い。硬いというか動かない。ガタガタと力を入れ思い切りドアを開こうする。なのに全然開く気配もない。
私の部屋からはガチャガチャと音がする。だから侵入したのか。
突然、ドアの硬さと重さが無くなりさっきのことがなかったかのようにすっとドアが開いた。急いでキャリーバックを確認する。でも、キャリーバックが開けられた後や何かしたあとも何もない。
部屋を見渡しても大きな窓も閉まっているし、足跡もない。それにあんな大きい音が鳴っていたのに荒らされてもいない。こんな不思議なことがあるものか。もしかして、晴人がキャリーバックから出てきてなにかしているのか。とも思った
その日は妙に思いながら夜を過ごした。
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