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「葛城!あいつ!いねえ!!」
「はぁ?!流星見逃すんじゃねえよ!」
フェンスの影から頭をのぞかせキョロキョロとする。でもそこには飲み差しのコーヒーと小銭が置いてあるだけ。
「はぁぁ、最悪。でも、1枚はとれたから大丈夫」
早歩きで公園の中を通り過ぎていく。緑の初々しい葉から漏れる光は私の顔を照らした。汗だくになったとしても逃げたい理由。
私はこんなふうになるつもりはなかった。
普通の女の子で普通の恋がしたかっただけなのに。愛が私を狂わせた。全部愛のせいなんだ。
高校三年生になった今。私は多くの課題に追われている。もうすぐ大人になるのに勉強もできず、運動もできず。恋人もできず。
でも、好きな人はいる。放課後運動場を見れば汗だくになった彼が水道の水を飲み、ゼッケンを背負い走り回っている。ゴールに向かって思い切りボールをける姿はとてもカッコイイ。
私があの人を好きになってから1年。もうそろそろ告白を考えている。でも、変な噂が学校中に広まっているらしい。
「松井羽菜さん、葛城晴人のこと付きまとってるんだってさ」
「え?まじ?!でも可愛いからな」
「葛城くん、鬱陶しくて嫌らしいよ」
こんなことを毎回耳にする。でも、そんな自覚はない。友達からもまた葛城くん見てるーと言われる。だけど自覚なんてちょびっともない。これが私の愛の表現の仕方なんだから、みんながおかしいだけ。
私は正しいんだ。そう心に言い続けた。
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