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葛城晴人のサッカーの練習の時、運動場の近くの通路の窓から覗く。
その様子を見て彼と同じく部活の人達がチラチラと私を見たり、後ろを通っていく人達が気持ち悪いだの鬱陶しいだの悪口を言っていく。運動場でもコソコソしている様子だがきっとそれは私が可愛いから、モテるからと勝手に解釈した。
部活終わりに汗を拭きながら自転車置き場に向かう彼を追い、物陰に隠れる。
「なあ、晴人。あの窓のとこにいた子知り合い?」
「さあ」
「やべえよな」
「可愛いけど、ちょっと気持ちわりいよね」
この時心にハートの矢が刺さった。可愛い。可愛い。彼の口から可愛いという言葉が出た。やっぱりモテてるんだ。私の愛が届いているんだ。私は可愛いという言葉だけが耳に入りほかの言葉は何一つ聞こえなかった。
前まで全然私に気づいてくれなくてきっと私の存在さえ知らなかったと思う。だけど、これだけ努力したからこの恋が実ったんだ。
次は、あの人と直接話したい。そういう欲が体中に広がった。
そわそわしながら家に帰る。後ろを向いたり、横を向いたり。
「おい、晴人、どうした」
「あの子、つけてきてないかな」
キョロキョロ見回すと必ずどこかにいる。電柱のところや、家の角。1年前から薄々感じていたが、ここまでだとは思ってもいなかった。前から俺のあとを付けて家まで来てたってこと?もし彼女が付けてきてたならそういうことになる。こんな恐怖は初めてだった。
「まじ、怖い」
「女だから大丈夫だろ」
右手に携帯を持ちこっちを見てくる。
盗撮しているのか?これってストーカーじゃないか。女子高校生だけど、犯罪なのかな。
これ以上悪化したら、警察にいえばいいか。
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