36人が本棚に入れています
本棚に追加
先程まで、自分を押し倒し襲おうとしていたとは思えないほど何事もなく両親と楽しそうに会話している嵐の姿に、実花はどこかうすら寒さを感じていた。
(お兄ちゃん、一体何考えて…)
「ご馳走さま」
「あら、もういいの嵐?」
「うん。あ、母さん」
「何?」
「今日、泊まってってもいい?」
「!?」
「そうねえ…。あなたの部屋物置になってるから、部屋は無理だけど、客室なら空いてるわよ?」
「そっか。母さん、ありがとう」
「どう致しまして」
「泊まってくのか、嵐!!なら、今晩は父さんの酒の相手して貰うぞ」
「え~…、分かったよ」
「………」
まさかの展開に、実花は食事が喉を通らなくなってしまった。
そして、思わず嵐へ視線を向けたことを後悔した。
父親に苦笑しながら申し出を受け入れていた嵐は、実花と目が合うと口角を上げ、嫌な笑みを浮かべていたのだ。
その後、食事と風呂を終えた実花は自室で明日の準備と寝る支度を行いながら、階下から聞こえてくる父親と嵐の笑い声に顔をしかめた。
(泊まるって、急に何でよ…)
心の中で悪態をつきながらベッドへと横になった実花。
けれどその時、先程嵐にされたことを思い出してしまい、勢いよく身体が跳ね起きた。
戸惑いながらももう一度身体をベッドへと横たえてみた実花だったが、身体は震えだし、横にすらなれなくなっていたのだ。
(どうしよう…。このままじゃ寝られない…)
落ち込んだ実花はどうしようかと考えている内に、原因を作った嵐の姿が頭を過り腹がたち始めた。
一つ嫌なことを思い出すと、今までにも感じてきた嫌なことが次々と思い起こされ、ベッドの枕を掴んだ実花は八つ当たりしだした。
「そう言えばお兄ちゃんは昔からああだった…。私が好きな人出来たって言えばその人に余計なことを話したり、バレンタインにチョコを作って用意しておけば勝手に中身全部食べちゃったり…、いい加減にしてよ…」
ボフッ
「お兄ちゃんの、馬鹿…」
バフッ
そうしている内に、段々と眠気に襲われ始めた実花は枕に顔を埋めると、そのまま横になり床の上で眠りに就いてしまった。
ふと身体への違和感で目を覚ました実花。
ぼんやりする頭で現状を確認し、怒っている最中に眠ってしまったことを思い出した。
そして、段々と意識が戻り始めたと同時に、身体を何かが這っていることに気付くと鳥肌が立ち始めた。
(な、何!?まさか…)
「目を覚ましたか、実花」
「お兄ちゃん!!いつの間に…」
「こんな所で寝てると風邪ひくぞ」
「ちょっと、やめてよ!!」
嫌な予感がしつつ肘をつき上半身を持ち上げた実花の目に飛び込んできたのは、実花の寝間着をたくしあげ馬乗りになった嵐が、指先でわき腹の辺りをなぞりながら胸元に顔を埋めて唇を落としている姿だった。
恥ずかしさと嫌悪感から、実花は嵐の顔を離そうと両手で必死に頭を押し退け、身体を捩ってもがいた。
「やめっ、て!お兄ちゃん!!」
「駄目だ。さっき邪魔されたからな」
「駄目って…、こんなことしてる方がダメだよ!!」
「それに、まだお前に俺を刻みつけていないしな…」
カリッ
「!!?」
小さく呟くように言葉を発した嵐は舌を出し、膨らみ始めた胸を突起まで舌を這わせ、一度口に含むと軽く噛みついた。
何とも言えない感覚が走り抜け、実花は言葉も出せず目を見開き身体をビクつかせた。
「気持ちいいか?」
「…なに、今の…」
「もう一回やってやろうか?」
「や、やだ…お兄ちゃん、止め…」
チュッ
「んぅ!?」
最初のコメントを投稿しよう!