秘密事

1/12
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 私は小さな頃から小説が好きで、幼い時は童話などだったが小学校も高学年になると勉強をサボっては太宰治や坂口安吾などを読んだ。家にはミステリーなど探偵ものの本がたくさんあったが明るくて好きになれなかった。私は暗い本や怖い本が好きだった。  お母さんの親やお兄さんが住んでいた所謂、お祖母ちゃんの家に行くと大きな本棚があってガラス戸の向こうには布張りの書物がいっぱいあった。海外の作家さんの本もたくさんあった。埼玉県の田舎に建っていた古い家。そこはもうドリームランドだった。小学校5年生くらいから、おとぎの国に迷い込んだ子供のようにはしゃいで書物を読み漁った。  伯父さんの家には月に2回くらいのペースで遊びに行った。お花やお琴の師範をしていた祖母は私と妹が遊びに行くとお小遣いをくれて、本屋で使ってもいいよと言った。お祖母ちゃんの家の傍の商店街には本屋が3軒あった。 「お姉ちゃん、また怖い本を買おうよ!」 「うん、私、江戸川乱歩がいい」 「江戸川乱歩もいいけど夢野久作もいいよね!」 「また、怒られたら大変だから一応ミステリーも買っておこうよ」  お母さんには「暗い本ばかり読むな」といつも怒られて取り上げられたこともあった。 「お姉ちゃん、私、怖い漫画も欲しい!」  漫画も好きだったがすぐに読み終わってしまう。小説なら一日潰せるし、何度でも読むことが出来る。まあ漫画も2、3回は読むが・・・。 「じゃあさ、1000円あるから漫画と小説を買おう」  安い本なら単純計算で一人2冊は買える。その頃は図書館が家から離れていたのでお祖母ちゃんに貰えるお金が唯一の趣味に投じれるお金だった。ぞくぞくする楽しさが本屋にはある。  妹とお小遣いをお菓子などに使わず全て本の為にはたいてお祖母ちゃんの家に帰る。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!