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「梨花、また、本屋に行ったの?」
お母さんが炬燵でミカンを剥きながら言う。
「うん」
「暗い本じゃないでしょうね」
「明るい本も買ったよ」
後ろ手に本を隠す。お母さんは心配してくれるには訳があることを知っている。私のお祖父ちゃん、お父さんのお父さんは首吊りをして自殺したのだ。本が大好きで、とじ込もっては本を読み、いつも暗く落ち込んでいたのだという。私が生まれる前のことだ。
「まあ、まあ、本くらい好きなものを読ませてあげればいいじゃない」
お祖母ちゃんがプリプリ怒るお母さんを宥める。
「そうね。でも勉強もちゃんとしてよ」
私は勉強は小さな頃は天才か!?というくらい出来たが成績はだんだん下がった。特に算数がダメだった。慎重な性格が災いしてテストの時に簡単な問題を何回も確認してしまうのだ。だからテストに設けられた時間内に全問を解くことが出来なかった。時間さえあれば100点満点も可能だったのに。だがこれが実力というものだ。
それから2年、歩いて30分の中学にあがる。ますます小説のとりこになった。読むものがないときは小学生の時に買って貰った百科事典を読む。完全に活字中毒だ。新聞やチラシも毎日欠かさず読んだ。もちろん小説を買ってもらうためにお祖母ちゃんの家にも行った。
「好きな本を買っておいで」
「はーい」
こんなに嬉しいことはない。あまりに小説に熱中して家庭にヒビが入っているのに気が付かなかったのである。
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