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プロローグ 藍
女性はひしゃくで「北島」とある墓石に水をかけた。
年齢は四十前半といったところだろうか。顔には優しい笑みを浮かべている。
血管の浮き出た手がひしゃくを動かす。
彼女の横には男性が立っており、墓石に水をかける彼女を見守っていた。
*****
僕は水だ。今は墓の上に乗っている。
僕はずっと昔、この世に生まれた。
僕の体の素は、とてつもなく長い時間を宇宙空間の中で過ごした。
そしてある日、僕はこの地球に降り立った。ここは居心地が良かったのでしばらく滞在させてもらう事に決めた。
人間は世界中に存在している。そしてそれぞれがそれぞれの特徴を持っている。
僕は人間に興味を持ち、長い間彼らを観察してきた。
僕は気付いた。彼らの中には「輝きの元」が秘められており、それをうまく輝かせる人が存在すると。
しかし、その輝きを発する者はそう多くはいない。
それは人々を繋ぐ力にもなるものだ。
輝きを言葉にすることは難しい。
最も近い言葉を使って説明するとすれば……それは「愛」だ。
僕はその輝きを探していた。
さて、難しい話はここまでにして、これから僕と彼女――北島藍の歩んできた道をお見せしよう。
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