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――――――
「だから、駅から近すぎるだろ。」
大山参道。11月上旬の美しい道に、るかは立っていた。
「よくわかったね。」
「荒削り過ぎ、あの暗号。」
ふふっと笑うと、るかは口を開いた。
「ここ、綺麗でしょ?大正時代に整備された参道なんだよ。明治時代に……」
「明治時代に活躍をした元勲・大山巌元帥とその一族の墓所でもあり、その参道には樹齢約90年を数えるイロハモミジが植えられている。そして、見頃の時期には色鮮やかなアーケードができる、だっけ…ホントに綺麗だな。」
夕日のせいでオレンジや赤などが輝くようで、幻想的な紅葉が僕とるかとを包んでいる。
「調べてくれたの?全然興味持ってくれなかった佑介君がね…嬉しいな」
心底嬉しそうなるかの笑顔。でもそこに影が差した。
「ねぇ、佑介くん。」
初めて会ったときのように、上目遣いでるかは僕に聞く。
「前世って信じる?」
そう言って笑いかけたるかは、やっぱりどこか寂しそうで。でも、僕は前世になんて興味はない。しかも、るかに会うのはこれでようやく三回目だ。信じる気だってさらさらなかった。それでも、それでも僕はるかに出会った。生きづらいこの時代で。運命?前世の宿命?そんなのどうだっていいのだ。一つ、確かなことは、
「……僕にとって、るかは唯一無二の大事な人だから、」
この世で出会えた、かけがえのない人なのだから、
「るかとの前世なら信じてもいいよ。だからどうか、」
驚くるかに僕は続ける。願わくば、と。前世と今世だけとは言わず、
「どうか、君と来世も。」
僕の言葉に、夕日が映える参道の真ん中で、君はふはっと吹き出した。
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