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――――――
「ここです!」
「だから近いなっ!」
2人で笑い合う。るかが連れてきたのは30分ほど歩いた場所にある、大野放牧場だった。時間的には大分あるのだが、るかといると、あっという間だった。まさか、自分の言葉が、ここまで自然に出てくるとは。思わずにやける。
「いつまでにやけてるのさ!」
「ふ、ご、ごめ…ふふっ」
「そんな面白くないし。」
膨れる彼女に説明を促す。
「もう…じゃあ、気を取り直して。ここ、大野放牧場は、明治期の御料所であり、後に陸軍演習場、金丸原開拓地となった場所なのです!」
「御料所、とは?」
「日本史でやったけど。」
「む…マジか。」
ここで無知がでるとは。不覚だ。
「御料所っていうのは御料所は、天皇とか幕府とかの公権力が直接支配した土地のこと。または家臣に与えられた土地も指す言葉。今は大田原市営牧場で、27haもあるんだよ!」
「詳しいな…。因みにるか、ヘクタールって…どれくらい?」
「自分で調べて。」
一瞬睨んだるかはくしゃっと笑うと、嬉しそうに
「誉めてくれるとは嬉しいですね!」
と、はしゃいでいる。僕はその後ろ姿に静かに話しかけた。
「るか…今日は、ありがとう。」
ピタリ、とるかが動きを止めた。
「すごく楽しかった。だから、」
「あのさ!」
勢いよく振り向いたるかは僕に駆け寄る。
「まだたくさんあるよ!日本遺産!たくさん、良い所が!きれいな参道とかさ!だから、だから…」
「話聞けって。」
自分勝手に捲し立てて、ふっと顔をあげたるかに僕はほほえむ。
「だから、また、どっか連れてってよ。」
目を見開いたるかは満面の笑みを浮かべ、僕に抱きついた。
「うわっ、ちょっと、」
「やったー!!超絶楽しみだよ!」
夕日に照らされた彼女の顔はとてもきれいで、僕は会って初日のるかに、一目惚れしたと今気づいた。
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