どうか、来世も。

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――――――  夢だったかも、とも思ったが、そんなことはなく、一週間後、約束の場所に、るかはいた。まぁ、自分の人生初の一目惚れを自覚してから、これを楽しみに学校に行っていたのもあったから、夢でなくて良かったのだが。 「おはよう、るか。」 「あ!おはよ、佑介君!」 前回、家に帰ってから思ったが、るかは可愛い。会うのはたった2回目だが、残念ながら可愛いのだ。それを自覚してしまうと駄目だ。キラキラしている。もう一度反芻する。可愛い。 「お、何を考えてるんだい、佑介君?」 「いや、なんでもない。で、今日はどこにいくの?」 よくぞ聞いてくれました!と気をつけすると、彼女は溜めに溜めてこう行った。 「……聞いて驚け佑介君。山田農場事務所跡ですよ、あの有名な。」 「…いや、知らないけど。」 ――――――  「まさか電車に乗るとは。」 「その後は近かったでしょ!」 るかの言うとおり、確かに駅からはそこそこ近かった。が、正直、 「どこだよ、ここ。」 「ここはですね、かつて司法大臣を務めた山田顕義の農場事務所跡なのです!」 「まぁ知らないけど。」 どうやら有名な人に関する資料が展示されているらしい。 「この雰囲気、どうよ!好きでしょ!」 「…悔しいけど割りと好き。」 「よっしゃ!」 結構道の奥のほうだし、農場事務所跡って聞いたから、いいイメージはなく、そして興味もなかった。でもるかといるせいか、大いに楽しかった。見学は、るかの説明を聞いているうちに、またあっという間に終わったが、今日は遠出したこともあり、帰ることになった。    電車を待つ間、るかがポツポツと前世の話を始めた。自分のもつ記憶は明治頃のものだと思われること。丁度いまと同じ十代のころだということ。そしてなにより、 「佑介君は、私の恋人、だったんだ。だから二年生になって初めて佑介君を見たとき、びっくりした。」 そう、話したるかに、僕は困惑した。僕はるかが好きだ。でも、かつてるかの恋人だったのは前世?とやらの僕で、今の僕ではない。しかも、今のるかが僕をどう思っているかも分からない。そしてそれを聞く勇気は残念だが今の僕にはないのだ。るかは勇気を出してこの話をしてくれたはずなのに。僕はこれに答えられない。 「そっか。」 と、ただ一言、僕は言った。るかは口を開きかけたが、ホームに電車がきたせいでその勇気はかき消された。それに気づいていた僕は、あえて 「あと、それはそれとして、今度どっかに遊びに行こう。遊園地とか、映画とか。」 と提案し、寂しそうに笑ったるかに一方的に約束を取り付けた。  帰りの電車で、るかは一言も話さなかった。
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