みどりの

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痛みもなく、ただ蔦が右腕に浮くのはタトゥーと変わらない。 タトゥーをいれたことはないけれど、この蔦は不自然さがある。 気持ち悪いという感じはしないし、具合が悪いわけでもないから放っておいた。 翌日、蔦の先端は皮膚の奥ではなく浮き上がって触覚のようにフラフラしていた。 海の中の生物のように、漂っている。 また伸びる先を探しているのか、剥がれ落ちていくのか 僕には予想ができなかった。急に生物と化した蔦は夜になる頃には、動かなくなっていた。 草木が枯れるように、蔦の先端は茶色に変わりパラパラと床に落ちていく。 まだ生きている緑の部分と、茶色の境目は触れると少し痛む。 蔦が僕の皮膚になったようだ。かさぶたに触れたときと同じようにピリピリとした痛みが走る。 植物が体の一部になっていくのは奇妙だが、不快ではない。不自然ではあるが、不快ではない。 ちぎれた蔦の先端は、洋服にこすれると痛む。
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