そのご。【杉のターン】

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綾斗は、この辺りの地区で有名なヤンキーの杉を恐れてない。 理由は無理矢理キスをされた経験があるからだ。 キスされた理由はただの嫌がらせだと考えている。 そんな事をする人間を軽蔑こそすれ危険視する事はなかった。 「杉先輩!退いて下さい僕重いです!!」 「やなこった。俺は寝みィんだよ」 必死に訴えるも、気だるげな杉に一蹴されてしまう。 「ちょっとぉ!?目ェ開けろ!!何人の足の上で二度寝しようとしてんだ!!」 「うるせえ、黙れ眼鏡。殺すぞ」 「アンタなんかに殺されません!」 綾斗の強気な態度に、杉は楽しそうに鼻を鳴らした。 「んとに、オメエは面白ェな」 云ってゆっくりと手を伸ばす。 その行動に綾斗はビクリと警戒した。 「俺が恐ェか?眼鏡」 一瞬、弱気な態度を垣間見せてしまった自分を叱咤し、綾斗は横に顔を振る。 「別に。僕恐くないです」 「なら身ィ屈めろ。頭撫でさせろ」 「なんでですか。嫌ですよ」 「いーから早くしろ」 「ったくもー」 身勝手な先輩に折れたのは、ただ単に綾斗が根っからのお人良しだからだ。 杉はゆっくりと綾斗の頭を撫で始めた。 「お前髪ストレートなんだな」 その言葉に自然と杉の髪に目が行く。 「杉先輩は…くせっ毛ですね」 「それがどーした」 しだいに綾斗は気恥ずかしくなってきた。
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